研究課題/領域番号 |
19K22600
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
西田 教行 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (40333520)
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研究分担者 |
石橋 大輔 福岡大学, 薬学部, 教授 (10432973)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | プリオン / 液相分離 |
研究実績の概要 |
全長のリコンビナントプリオンタンパク(rPrPC)と23-89アミノ酸を欠失させたΔ(23-89)rPrPCのβシート構造の形成能を、アミロイドに特異的な蛍光色素であるチオフラビンTを用いて、経時的に定量した。全長rPrPCの液滴は48時間の観察時間中、チオフラビンTの蛍光値が増加したが、Δ(23-89)rPrPCでは蛍光値の変化は見られなかった。この蛍光値の増加は、液相から固相に転じる相転移の変化を反映していると考えられる。 また、ゲル状の固相rPrP(rPrPゲル)と生体内の異常型プリオンタンパク(PrPSc)とを比較してどのような生化学的特性を持っているかを検討した。PrPScはプロテイナーゼK抵抗性及びrPrPをアミロイドに変換するシード活性を持つことが知られている。rPrPCゲルについても同様の生化学的特性を持つかどうかをウエスタンブロット法及びRT-QuIC法を用いて検討した。ウエスタンブロット法からはrPrPゲルはPrPScとほぼ同程度のプロテイナーゼK抵抗性を示した。しかし、試験管内でPrPの構造変換を促進するReal Time-Quaking Induced Conversion(RT-QuIC)法でrPrPゲルを用いても、正常型PrPの構造変換反応は認められなかった。このことから、我々が作成した固相PrPゲルはシード活性は持たないことが明らかになった。この理由は現時点では明らかでないが、rPrPCに核酸などを添加することで感染性を持つアミロイドの作成に成功した報告が過去になされていることから、今後同様のアプローチで人工感染性アミロイドの確立を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
作成したゲル状の固相PrPがプロテイナーゼK抵抗性を示したりチオフラビンTと結合するなど、異常型プリオンタンパクと同じような性質を持つことが証明できた。しかしこの固相PrPはシード活性を持っていない。N末端の変異や遺伝性プリオン病で認められる変異を導入したプリオンタンパクで検討を行う必要が出てきたため。
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今後の研究の推進方策 |
プリオンタンパクのN末端側がアミロイドゲル形成に重要な役割を果たしていることが分かった。このN末端の変異体のrPrPを用いてさらに詳しく研究することで、効率よくアミロイドゲルができる条件やシード活性を持つ条件を見出す。 また、pathological mutationをもったrPrPを作成して、同様の実験をおこなう。これら2つの方法で、シード活性を持つ固相PrPの作成し、PrPScが生まれるメカニズムを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの流行に伴う緊急事態宣言で実験する時間が減少したこと、学会へ行く旅費が不要になったことで、使用しなかった助成金が発生した。 作成した固相PrPゲルがアミロイド様の性質を持つことが分かったが、正常なPrPの構造を変換させるシード活性は示さなかった。シード活性を有するには何が必要であるかさらなる研究を進めるために使用する。 繰り越した経費は実験に必要なリコンビナントPrP作成のための試薬(ニッケルカラム等)の購入や国際学会(Asia Pacific Prion Symposium 北京)の参加費用に充てる予定。
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