本研究の目的は神経変性疾患の診断に資する新たな非侵襲イメージングを開発することである。 今年度は、正常なマウスに加え、髄鞘形成不全のShivererマウスの脊髄標本を対象に高解像度の拡散MRI実験を行い、水分子拡散を定量できる拡散変位量解析を実施した。計測にはStimulated echo法を用い、拡散時間を15~200msecと変えることで、神経組織構造における拡散時間と拡散変位量の関係を調べた。 その結果、脊髄に垂直な拡散変位量は、拡散時間の増加に伴い、軸索密度の異なる神経束間の差が大きくなった。一方で、髄鞘の有無による差は拡散時間によってほとんど変化しなかった。次に、脊髄に平行な拡散変位量は、拡散時間に関わらず、軸索密度の異なる神経束間の差を捉えることがわかった。そして、髄鞘の有無による差は、拡散時間が比較的短い場合に、大きな差として捉えることができた。 以上より、拡散MRIにおいて計測する拡散方向や拡散時間によって、得られる拡散変位量は神経組織特異的な情報を捉える可能性を秘めている。今後、データ数を増やし、詳細な検証を進めていく予定である。 今年度は所属機関の異動に伴い、当初予定していたモデルマウスのIn vivo実験の実施が困難となった。そこで、本研究目的達成のため、髄鞘形成不全モデルマウスの脊髄標本を対象としたEx vivo実験に計画を変更したが、Ex vivoにおける高精度な評価を進めたことで、予定した以上の知見を得ることができた。
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