研究課題/領域番号 |
19K22610
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
猪原 匡史 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (00372590)
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研究分担者 |
仲野 和彦 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (00379083)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 脳出血 / 齲蝕原性細菌 / コラーゲン接着因子 / Cnm / 分子標的 |
研究実績の概要 |
脳出血の病態理解は, 近年劇的に変容した.脳出血の発症には未知の因子が関与しており,その診断・治療法の開発にもパラダイムシフトが必要と考えられている.申請者らは,コラーゲン結合蛋白Cnmを産生する齲蝕原性細菌が脳出血および脳微小出血に強く相関することを見出したことから,更なる研究開発を進めることで,脳出血の分子標的予防法を開発できる可能性が高く,まずはその病態モデルを確立し,脳出血発症の機序を明らかにすることを目指している. Stroke prone-spontaneous hypertensive rat(SHR-SP)に塩分を負荷し,Cnm陽性齲蝕原性細菌を経静脈的に投与することで,cnm遺伝子をノックアウトした株を投与した群と比較し,若年で脳内出血を発症し,脳微小出血が多数認められることを見出した.既に,免疫染色や電子顕微鏡による観察を終え,Cnm陽性齲蝕原性細菌が血液脳関門の破綻に果たす役割について明らかにしつつある. また,臨床研究では,Cnm陽性齲蝕原性細菌保有者では,経時的に頭部MRIを観察すると,有意に微小出血が非保有者に比べて増加することを見出した.穿通枝血管によって支配される基底核領域における傾向がより強く,高血圧性の細動脈変化と相加的な役割が示唆され,同時にCnmと脳内微小出血の因果関係が示唆されている.Cnmを標的とした分子標的療法の有用性が示唆される結果が得られている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎研究が順調に進んでいる(未発表データ含む).さらに,臨床データも得られ,近日中に国際誌に出版予定である.
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今後の研究の推進方策 |
1.ラットモデルによる非臨床POCの取得:抗Cnm抗体のエピトープを1.Cnm陽性齲蝕原性細菌投与ラット脳出血モデル,2.Cnm陽性齲蝕原性細菌投与ラット感染性心内膜炎モデルにワクチンとして投与し,その表現型の軽減効果を検討することで,Cnmワクチン療法の非臨床POC取得を目指す。 2.Cnm以外の標的蛋白の探索:齲蝕原性細菌の培養上清から膜小胞画分を超遠心法により分離し,高磁場型フーリエ変換質量分析計でプロテオーム解析を行い,Cnm陽性と陰性菌間の比較検討を行うことで,Cnm蛋白以外の標的分子を探索する研究行う.有力候補分子をSHR-SPに投与することで,脳出血への関与を確かめる.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染拡大の影響で,予定していた研究消耗品の納品に遅延が生じた.
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