研究課題
肝線維化はアルコール、肥満等の生活習慣病的要因により引き起こされ、肝硬変・肝癌へと進行するが、線維化に対する根本的な治療法は確立していない。ハーボニーをはじめとしたウイルス性慢性肝炎に対する治療薬の開発により、今後非アルコール性脂肪肝炎が慢性肝炎の主因になることが予想されることから、ウイルスを標的とせず肝線維化を直接阻害する治療薬の開発がますます期待されている。肝線維化の標的として、肝星細胞は重要である。肝星細胞は、通常はビタミンAを貯蔵しているが、炎症性サイトカインによって活性化され筋繊維芽細胞様に分化する。分化した肝星細胞はI型コラーゲンの分泌を異常亢進し、これが線維化の主な要因となっている。以前から、細胞内の分泌を司る小器官である小胞体やゴルジ体が、肝星細胞の活性化の過程で肥大化することは知られていたが、肝星細胞の分泌経路の変化に着目した研究はほとんど行なわれていなかった。研究代表者は、これまで炎症性サイトカインによって刺激を受けた肝星細胞が、転写因子CREB3L2依存的に、小胞の被覆因子として機能するSec23A/Sec24Dを特異的に発現上昇させることを見出した。さらに、コラーゲンとは異なる未同定の肝線維化責任因子が小胞体からゴルジ体へと輸送されることで、初期の肝星細胞活性化に関与する可能性を明らかにした。本年度は、未同定の肝線維化責任因子の探索に用いる細胞として、培養肝星細胞であるLX-2細胞にSec23Aを安定的に発現する安定発現株の作成を行った。また、我々が作成した種々の小胞輸送関連因子の抗体を用いて、肝線維化病理組織の染色に用いることができるか検討する目的で、抗体の組織染色に対する有用性の検討を行った。その結果、Sec23Aの抗体を始め、いくつかの抗体が組織染色できることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
本年度は我々が既に作成した、小胞輸送関連因子群の抗体が、免疫組織染色に使用できるか検討を行った。その結果、Sec23Aの抗体を始め、いくつかの抗体が免疫組織染色に使用できることを明らかにした。また肝線維化責任因子の同定に使用するために、Sec23Aを安定的に発現する細胞株を培養肝星細胞であるLX-2細胞を用いて樹立した。
今後は作成した安定発現株を用いて肝線維化責任因子の探索を行う。またさまざまな病理組織を用いて小胞輸送因子群の組織における局在と発現状態を解析する。
本年度は、安定発現株の作成と組織染色の予備的検討であり、研究費の使用額が抑えられた。次年度はこれらを用いて肝線維化責任因子の探索を行うために使用する。
すべて 2019 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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https://www.med.akita-u.ac.jp/department/gs/kenkyu-org/kouza.php?koza=yakuri