研究課題
シングルセルRNA-seq解析は、RNAの発現量を1細胞ごとに網羅的に計測する技術で、腎臓のように多種多様な細胞で構成される臓器の解析において非常に有用な知見をもたらす。我々は、まずヒト腎組織scRNA-seqを行う実験条件の最適化を図る。なお、本研究では正常腎組織としては腎悪性腫瘍で腎全摘術を受けた患者の腎正常部分を、病気腎としては腎生検組織の一部を用い、最適化を行った。その後、sequence read archiveに登録されている複数のシングルセルRNA-seqデータを再解析し、腎発生におけるnephron progenitorの自己複製プロセスや細胞間コミュニケーションなどを明らかにしました。具体的にはPartition-based graph abstraction (PAGA) initialized ForceAtlas2でE18.5マウス腎臓構成細胞をマッピングしたところ、PAGA-initialized FA2により発生系譜を反映した形に細胞がマッピングされた。また、表層stromal cell (ST (sup))、ureteric bud (UB)、endothelium (Endo)、macrophage (Mφ)およびpericyte (Peri)が、podocyte (Podo)、early proximal tubule (Early_prox)、early Henle loop (Early_Henle)、Henle loop and distal tubule (Distal + Henle) の分化においてcomma shaped bodyおよびS-shaped bodyに与えるシグナルを可視化することもできた。シングルセルRNA-seq解析では、trajectory解析やRNA velocity解析などを用いることで、従来のbulk RNA sequenceとは異なった側面から生命現象を捉えることが可能です。シングルセルRNA-seq解析技術は日々進化しており、今後益々有用なツールとなると考えられた。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Sci Rep
巻: 11 ページ: 73
10.1038/s41598-020-80154-y