腸管における炎症、炎症収束には免疫細胞が深く関与している。上皮バリアの維持、修復には自然リンパ球、マクロファージ、制御性T細胞(regulatory T cells; Treg)などの関与が報告されている。特にTregは消化管の炎症抑制の中心的役割を担っており、炎症の収束及び腸管上皮再生のキープレーヤーである。炎症性腸疾患患者においてはTreg数が腸管において増加しているにもかかわらず腸炎が収束しないという相反する結果を有している。これまでの検討は組織を固定し免疫染色を利用した手法であり、空間的な解析、さらには時間軸を含めた4次元解析を行なっている研究は数少ない。 申請者はこれまで、正常腸管におけるTreg動態についての研究を報告している(Sujino T. Science 2016)。Tregの動態解析は生理的条件下のみで行っており、腸管組織障害および修復過程におけるTregの時空間的な解析、および病態メカニズムへの関与は検討されていない。 実際に昨年腸管における局在、動態変化をきたす因子を抽出し、実際に動態に影響する遺伝子改変マウスを作成した。腸管内における特異的な遺伝子KOマウスを利用した結果、腸管内における各種細胞の局在、動態が制御されていることが明らかになった。さらにヒト炎症性腸疾患においてもTregの局在が、治療薬剤により変化することが明らかとなった。また、局在の変化が治療に対しても有効であることも判明した。
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