研究課題/領域番号 |
19K22626
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
遠山 周吾 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任講師 (90528192)
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研究分担者 |
柴 祐司 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (70613503)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | ヒトiPS細胞 / 心筋細胞 / サル / 催不整脈作用 / 再生医療 |
研究実績の概要 |
ヒトiPS細胞は心筋細胞を含むさまざまな細胞へ分化することができるため、再生医療への応用が期待されているが、心臓再生医療を実現化するためには、移植後の催不整脈作用という複数の課題を克服しなければならない。 申請者らは、これまでヒトに近い大型動物モデルとしてマイクロミニブタの心筋梗塞モデルに免疫抑制剤投与下においてヒトiPS細胞由来心筋球を移植し、催不整脈作用の解析を行ってきた。しかしながら、ヒトiPS細胞由来心筋球が長期生着できず、免疫拒絶による催不整脈作用と移植心筋由来の催不整脈作用を分離することができなかった。一方で、サルにヒトiPS細胞由来心筋細胞を移植した場合、ブタに比べて長期間生着し、心室頻拍等の心室性不整脈が誘発されることが明らかとなっている。本研究では、申請者によるヒトiPS細胞由来高純度心室筋作製技術と研究分担者の柴らによる霊長類モデル作製技術を融合することにより、移植心筋細胞における催不整脈作用機序を明らかにし、安全な心臓再生医療への応用に繋げることを目的として研究を行った。 R元年度は、ヒトiPS細胞由来高純度心室筋細胞および微小心筋組織球の作製を行うと同時に信州大への輸送システムを確立し、カニクイザルの虚血再灌流モデル心臓への移植を行った。その結果、ヒトiPS細胞由来心筋細胞が生着可能な免疫抑制剤のプロトコールを確立すると共に、催不整脈作用に関する解析が可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、ヒトiPS細胞由来高純度心室筋細胞の作製および信州大への輸送システムを確立し、カニクイザルの虚血再灌流モデル心臓への移植を行った。既に、ヒトiPS細胞由来心筋細胞が生着可能な免疫抑制剤のプロトコールを確立すると共に、不整脈解析に関しても可能であることを確認しており、順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も、引き続き細胞移植を行い、心機能改善効果の評価および催不整脈作用に関する解析を行っていく予定である。 【1. 臨床グレードヒトiPS細胞由来心筋細胞の作製】京都大学iPS細胞研究所において作製されたHLAホモ接合体ヒト由来のiPS細胞から申請者が構築してきた2次元大量培養系により心筋細胞へ分化誘導し、無グルコース無グルタミン乳酸添加培養液により純化精製を行うことにより臨床グレードの心筋細胞(心筋含有率99%、未分化幹細胞残存率0.001%未満)を作製する (Cell Metab. 2016, Stem Cell Reports 2017)。培養液や試薬に関しては全て生物原料由来基準に適合したものを使用する。 【2. 臨床グレードヒトiPS細胞由来純化心筋球の作製】純化精製前後の心筋細胞からマイクロウェルプレートを用いて純化心筋球あるいは非心筋細胞を含有した直径200μmの微小組織球を作製する。 【3. カニクイザル心筋梗塞モデルの作製】研究分担者の柴らによりカニクイザル心筋梗塞モデルを作製する (Nature 2016)。 【4. カニクイザル心筋梗塞モデルにおける催不整脈作用の解析】カニクイザル心筋梗塞モデルに免疫抑制剤投与下で【2】で作製した純化心筋球あるいは非心筋球を5000万細胞移植し、移植後の催不整脈作用をホルター心電図により経時的に解析する。 【5.移植細胞の生着と電気的結合および心機能の解析】移植後12週後の心臓切片を作製し、移植細胞の生着を確認する。心機能に関しては心エコーおよびマイクロCTにより評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により細胞培養を縮小させる必要があったこと、さらに今年度細胞移植や解析に多くに費用が必要となることから次年度に使用させていただくこととした。
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