研究課題/領域番号 |
19K22627
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
稲垣 豊 東海大学, 医学部, 教授 (80193548)
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研究分担者 |
柳川 享世 東海大学, 医学部, 助教 (10760291)
赤池 敏宏 公益財団法人国際科学振興財団, その他部局等, 主席研究員 (30101207)
後藤 光昭 公益財団法人国際科学振興財団, その他部局等, 主任研究員 (80235001)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 肝臓学 / 薬物送達 |
研究実績の概要 |
エクソソームは細胞外分泌小胞の一部で、体液中を循環することで遠隔臓器の細胞に情報を伝達する天然キャリアーとして注目されている。しかしながら、エクソソーム自体が有する(1) 細胞内取り込み効率の低さ、(2)エクソソーム内包物質のサイトゾル放出性の低さによる効果の減弱、(3)標的細胞以外への送達による副作用の出現、といった問題から、DDSキャリアーとしてのエクソソームの利用には未だ多くの課題が残されている。 本研究は、エクソソームの細胞への取り込みやサイトゾル放出性を向上させるとともに、バイオマテリアル技術を応用して細胞認識性を付加した新規のエクソソームを開発することで、従来の限界を打ち破る創薬の新たな方法論を提案することを目的としている。研究初年度となる2019年度は、薬物送達モニタリング用エクソソームの開発を行い、以下の知見を得た。 1)ホタル・ルシフェラーゼをエクソソーム内包タンパク質として培養液中に高効率に分泌するため、同ルシフェラーゼ遺伝子とエクソソーム指向性タグとを連結した発現プラスミドを作製した。この際、ルシフェラーゼ遺伝子独自のコザック配列と転写開始部位を欠損させることで、トランスフェクションされたHEK293細胞の培養上清中エクソソーム分画のルシフェラーゼ活性は約2倍に増加した。 2)同様に、mCherry とEGFPとの連結分子をエクソソーム内包タンパク質として培養液中に分泌するエクソソーム誘導性の発現プラスミドを作製し、これをHEK293細胞にトランスフェクションすると、同細胞の細胞質と分泌エクソソーム中には黄色蛍光を呈する融合タンパク質が確認され、これを取り込んだ初代培養肝細胞の細胞質内にはpHの低下に伴って黄色または赤色の蛍光を有する粒子が検出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
取り込み効率の定量評価に有用なホタル・ルシフェラーゼ搭載エクソソーム、ならびに取り込んだエクソソームのエンドソームからサイトゾルへの放出を確認するためのmCherry/EGFPエクソソームの産生系を確立したことで、次年度以降に予定しているエクソソームの修飾による薬物送達能の改善が評価可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に作製したモニタリングエクソソームを用いて、薬物送達の改善に向けて以下の実験を行う。 1)ホタル・ルシフェラーゼ搭載エクソソームに、細胞への取り込みを増強させる目的でカチオン性脂質の DOTAPを混合後に細胞培養上清に添加し、ルシフェラーゼアッセイにより細胞への取り込み効率の改善を評価する。 2)エクソソーム内包タンパク質のサイトゾル放出性を高めるために、pH感受性膜融合ペプチドを用いた検討を行う。この際、EGFP蛍光のpH依存性を利用して、mCherryとの共発現の有無によりエクソソーム内包タンパク質のサイトゾル放出を評価して、上述したpH感受性膜融合ペプチドの有用性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)研究初年度においては、樹立細胞株であるHEK293細胞を用いたエクソソーム産生系の確立に多くの時間を割いたため、エクソソームの取り込み側である初代培養肝細胞を得るためのマウスや細胞分離試薬の購入に予定経費を全額使用するには至らなかった。 (使用計画)次年度からは、初代培養肝細胞を用いた取り込み効率や細胞内局在の検討が本格化するため、上述したマウスや肝細胞分離試薬・培養関連機材の購入が予定されている。
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