研究課題/領域番号 |
19K22631
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
藤原 裕展 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (20615744)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 基底膜 / ライブイメージング / 皮膚 |
研究実績の概要 |
これまで当研究室では、基底膜分子への蛍光抗体を用いた基底膜ダイナミクスの解析を行ってきた。この抗体法には、標識する抗体を変えるだけで様々な分子の動態を可視化できるという利点があるが、抗体の非特異的な結合、撮像中の蛍光の退色、そして動態トラッキングのための局所的な蛍光退色の必要性など、欠点もある。これらの問題を克服するために、今年度は、基底膜が蛍光標識される「基底膜レポーターマウス」を作製した。具体的には、4型コラーゲンの特定の領域に、eGFPもしくは光による色変換が可能な蛍光蛋白質monomerik KikumeGR (mKikGR) をCRESPR/Cas9法で挿入したノックインマウスを作製した。これらのノックインマウスは、4型コラーゲンと蛍光蛋白質が融合したタンパク質を発現する。ノックインマウス成体皮膚組織の組織学的な解析の結果、eGFPとmKikGRは共に、皮膚の全ての基底膜に選択的に沈着していることが明らかとなった。また、これらノックインマウスは、ホモ遺伝型でもviableでfertileであることから、融合タンパク質は機能的であり、個体の発生、恒常性、生殖機能に大きな影響を与えないことが示唆された。さらに、組織中の特定の微小領域のmKikGRに405 nmレーザーを短時間照射することで、基底膜を緑蛍光から赤蛍光に色変換することに成功した。今後は、これらの基底膜レポーターマウスを駆使して、基底膜の動態とターンオーバーの実態に迫る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度実施予定であった蛍光抗体を用いた基底膜ダイナミクスの解析に加え、次年度に予定していた基底膜レポーターマウスの確立に目処がたったため。
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今後の研究の推進方策 |
蛍光抗体法よりも実験系としてのポテンシャルの大きい基底膜レポーターマウスを用いた基底膜ダイナミクスの解析に集中する。マウス皮膚発生毛包の様々な領域の基底膜を色変換し、その移動、拡張、ターンオーバーの時空間ダイナミクスを詳細に解析する。細胞の動態との関係を明らかにするために、細胞核や細胞膜を蛍光標識できる遺伝子改変マウスと掛け合わせることで、細胞動態(移動、増殖、形態変化など)と基底膜動態度の関連を明らかにする。さらに、基底膜のダイナミクスやそれを制御する細胞骨格を阻害することで、基底膜ダイナミクスを支える分子基盤に迫る。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子組換マウスの作製が、当初予定していたよりも効率的に行われたため、今年度は、実験試行回数を減らすことが出来たため。繰越された予算は、当初予定よりも研究計画を発展させるため、今年度効果的に利用される予定である。
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