研究課題
PPARgは糖脂質代謝制御で中心的な役割を担う転写因子である。最近の研究の結果、PPARgはリン酸化などの翻訳後修飾を受けており、これら翻訳後修飾がPPARgの活性を制御していることが明らかになっている。近年、プロピオニル化、サクシニル化、マロニル化などリシン残基のアシル化が新たな翻訳後修飾として注目を浴びている。本研究ではPPARgのアセチル・アシル化修飾とそれら脱アシル化酵素であるSIRT7による翻訳後修飾変容について検討を行うものである。プルダウンアッセイや免疫沈降法による検討の結果、PPARgとSIRT7が結合することが判明した。293T細胞にPPARg単独およびPPARgとSIRT7を遺伝子導入し、PPARgのアセチル化状態について検討したところ、SIRT7はPPARgのアセチル化を減弱する作用を有していることが判明した。またルシフェラーゼアッセイを行ったところ、SIRT7はPPARgの転写活性を増加させることが判明した。SIRT7ノックアウトマウスの白色脂肪組織におけるPPARgの標的遺伝子(Fatp1, Cd36, Adiponectinなど)の発現は低下していた。これら結果からSIRT7はPPARgに結合し脱アセチル化することで、PPARgの転写活性を増加する作用を有していることが明らかになった。SIRT7により脱アセチル化されるリシン残基を同定するために、3種類のPPARgの欠失変異体を作製し、SIRT7との結合についてプルダウンアッセイで検討したところ、SIRT7はPPARgのC末端に結合することが明らかになった。SIRT7はPPARgのC末のリシン残基を脱アセチル化するものと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究により、PPARgがアセチル化修飾を受けており、SIRT7がその脱アセチル化酵素であることが判明した。
本年度の研究により、SIRT7によりPPARgが脱アセチル化されること、脱アセチル化により転写活性が増加することが判明した。そこで次年度においてはアセチル化を受けるリシン残基の同定を行い、アセチル化の有無が転写活性に影響を及ぼす分子機構を解明する。またPPARgのアセチル化以外のアシル化(プロピオニル化、サクシニル化)修飾とその機能に及ぼす影響についても検討を行う。
本研究では、PPARgのアセチル化・アシル化修飾が機能に及ぼす影響について検討を行うものである。初年度にはPPARgのアセチル化に関する研究が進展したため、アセチル化修飾による機能制御に集中して研究をすすめた。アシル化解析に必要なアシル化リシン特異的抗体などの購入を次年度に変更したことで、当初計画していた使用額と実際に使用した額との間に差が生じた。差額分は次年度に実施するアシル化研究で必要な金額であり、次年度の研究で使用する予定である。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://srv02.medic.kumamoto-u.ac.jp/dept/biochem2/biochem2.html