研究課題
PPARg2は脂質代謝制御の中心的な役割を担う転写因子である。近年の研究の結果、PPARg2はリン酸化などの翻訳後修飾を受けており、これら翻訳後修飾がPPARgの活性・働きを制御していることが判明している。本研究はPPARg2のアセチル化・アシル化修飾の意義および脱アセチル化・アシル化酵素であるSIRT7がPPARgの翻訳後修飾に及ぼす影響について検討するものである。本年度の研究の結果、SIRT7はPPARg2と結合し、PPARg2を脱アセチル化する働きを有していることが判明した。SIRT7により脱アセチル化されるアミノ酸の検索を行ったところ、SIRT7はPPARg2の382番目のリシン残基を脱アセチル化することが判明した。一方、PPARg2においてサクシニル化修飾などのアシル化修飾は認められなかった。野生型PPARg2、K382R-PPARg2(脱アセチル化PPARg2をミミック)、K382Q-PPARg2(アセチル化PPARg2をミミック)をC3H10T1/2細胞に発現後、脂肪細胞に分化させたところ、野生型およびK382R-PPARg2発現細胞では細胞内に著しい脂質の蓄積が認められたのに対し、K382Q-PPARg2発現細胞では細胞内の脂質蓄積がほとんど認められなかった。RNA-seq解析を行い、発現遺伝子の変化について検討したところ、K382Q-PPARg2発現細胞ではアセチルCoAカルボキシラーゼ(Acaca)、脂肪酸合成酵素(Fasn)、転写因子SREBP1c(Srebp1c)の発現低下が認められた。以上の結果からSIRT7はPPARg2の382番目のリシンを脱アセチル化することでリポジェネシスに関連する遺伝子の発現を制御し、脂肪細胞内の脂質蓄積を増やす働きを担っていることが判明した。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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