研究課題/領域番号 |
19K22640
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
指田 吾郎 熊本大学, 国際先端医学研究機構, 特別招聘教授 (70349447)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | トリソミー8 / 数的染色体異常 / 骨髄異形成症候群 / クロマチン / エピゲノム / 転写因子 |
研究実績の概要 |
骨髄異形成症候群(MDS)は、高齢者に好発する予後不良ながんである。染色体異常による病態基盤を理解するために、疾患iPS細胞は-7/7q- MDSで報告されているが、元来、MDS細胞は増殖活性が低く、疾患iPS作製過程でMDS本来のエピゲノム病態も消失しており、発症機序の検証には適当ではない。また、ヒトMDS幹細胞は免疫不全マウスに長期間維持できず、異種移植による解析は極めて困難である。こうした病態研究の困難を打破するために、人工染色体とゲノム編集技術を融合したヒト8番染色体導入・マウス変異ES細胞による+8 MDSモデルを新たに確立することで、数的染色体異常によるMDS発症機構を解明する。MDSは、造血幹細胞より発生して分化障害・造血不全状態になり、高齢者に好発する予後不良なかがんである。ただし、染色体異常によるMDSの病態基盤は明らかではない。トリソミー8 MDS(+8 MDS)の生体レベルでの病態基盤を解明するために、人工染色体とゲノム編集技術を用いて、ヒト8番染色体をマウスES細胞(C57BL/6)に導入して、MDSモデルを新たに確立した。次に、+8キメラマウ スを作製することで、生体レベルでのトリソミー8の機能的役割を解析する。統合的なエピゲノム解析によって8番染色体のMDS責任候補領域を絞り込んだうえで、ゲノム編集べクターライブラリーを用いて、MDS幹細胞の発生と疾患発症の病態基盤を解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人工染色体とゲノム編集技術によるヒト8番染色体導入マウスES細胞樹立 人工染色体技術を用いて、ヒト8番染色体を野生型マウスES細胞へ導入した。OP9細胞によって分化誘導すると、8番染色体の脱落とともに、+8 ES (GFP+)はCD31+CD41+血管内皮細胞への分化が著しく障害された。さらにRunx1を欠損すると、Bリンパ球への分化に偏り、顆粒球の分化障害を認めた。従って、遺伝子変異とトリソミー8の協調による血球分化障害が示された。さらに、+8キメラマウス作製に成功しており、現在、生体における造血機能解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
+8キメラマウスを活用することで、生体レベルでのトリソミー8の機能的役割とMDS病態基盤を検証する。この+8マウスでの幹細胞の遺伝子発現・エピゲノム解析を通して絞り込んだ8番染色体の責任候補領域をゲノム編集によって欠損させて、MDS発症および幹細胞機能を検証する。以上、新規+8生体モデルによる+8 MDSの病態基盤解明を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
来年度は、年度の後半にかけて研究が進捗したため、物品費を中心に次年度の使用額が生じた。次年度使用額は、こうした物品費や人件費・謝金を主に使用する予定である。
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