研究実績の概要 |
結核菌は世界10 大死因の一つに数えられ、2016 年には世界中で1,040 万人が結核に罹患し、170 万人が結核で死亡している。多剤耐性結核菌(MDR) や広範囲薬剤耐性結核菌(XDR)に対しては、治療効果を発揮しない例が増加している。結核菌が潜伏感染すると、肺組織のマクロファージに結核菌が感染して形成した肉芽腫が多く認められる。マクロファージの他に、結核菌特異的CD4 陽性T 細胞の局在も多く認められるが、これらのCD4 陽性T 細胞は、結核菌の除去に大きな役割を果たすIFN-gやTNF-a 産生細胞のみならず、IL-17 , IL-4 およびIL-10 産生CD4 陽性T 細胞(結核菌の潜伏感染に寄与すると考えられる細胞群) も認められる。特に、多剤耐性結核菌患者では、IFN-g 産生CD4 陽性T 細胞の著しい減少やFoxP3+CD4 陽性T 細胞の割合が著しく上昇していると報告されている。また、結核患者では、IL-6, IL-9 およびIL-22 の産生上昇が認められ、抗結核免疫応答の抑制が示唆される。 申請者の先の研究から、HSV-2 ワクチン株をマウス膣粘膜組織に免疫5 週間後、膣粘膜組織にはHSV-2 特異的メモリーT 細胞やマクロファージを中心とした抗原提示細胞の凝集(メモリーリンパ球クラスター; Memory Lymphocyte Clusters (MLC)) の形成が誘導され、HSV-2 をワクチン株と同じ部位に感染させると、強力な抗ウィルス能を発揮することを報告している。 そこで、強力な抗ウィルス能を長期間維持するMLC を応用し、新規抗酸菌治療の基盤の構築を目指す
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