研究課題/領域番号 |
19K22646
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
植木 伸也 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (30837258)
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研究分担者 |
後藤 了一 北海道大学, 大学病院, 助教 (10645287)
財津 雅昭 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (20768981)
渡辺 正明 北海道大学, 医学研究院, 特任講師 (40789848)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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キーワード | 記憶T細胞 / マウス心移植 / CD3抗体 |
研究実績の概要 |
本研究では臓器移植における免疫寛容誘導の障害となるドナー抗原に対する免疫記憶に関わる記憶T細胞の個別制御を目的としている。免疫記憶に関わるT細胞全体を制御することは免疫寛容誘導に関わる細胞も制御する可能性があり、攻撃性のあるアロ抗原記憶細胞のみを個別に抑制する必要がある。2019年度は、研究分担者の後藤らが報告 (Am J Transplant 2012)した免疫寛容誘導の手法、即ちFc非結合型抗CD3抗体による免疫寛容誘導法が、報告と異なるマウス系統間(BALB/c→C57BL/6)においても成立することを確認した(n=5)。また、アロ抗原感作をアロ心移植または、アロ皮膚移植にて実施し、この8週後の感作マウスの脾臓内にアロ抗原に対する記憶T細胞が存在していることをIFNg-ELISPOT法にて確認した。更に皮膚移植にて感作後のマウスに感作抗原と同系統のアロ心グラフトを移植すると、急速に拒絶反応が生じることを明らかにした(n=5, MST 5日, p<0.01 vs. 感作無し MST 7日)。このマウスに抗CD3抗体を投与する免疫寛容誘導プロトコールを実施したが、皮膚移植感作後のマウスでは免疫寛容は誘導されず、アロ心グラフトは速やかに拒絶された(n=5, MST 5日)。感作マウスに存在するアロ攻撃性の記憶細胞の特異的な細胞集団を明らかにする目的で、感作マウスから採取したリンパ球をアロ抗原刺激した時の増殖リンパ球を観察した。このリンパ球はTCF-1lowPD-1hiCD8陽性T細胞であり、これをin vivoの心グラフトで観察すると早期にグラフト内に浸潤していることが明らかとなった。この研究成果をまとめて国際移植学会、日本移植学会での報告、論文投稿を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していたトランスジェニックマウスの導入が、コロナ禍の影響で米国からの輸入が困難となったこと、またB6-Ly5.1コンジェニックマウスを用いた移入細胞の研究を計画していたが、感作細胞移入による心移植のコントロールが確立できなかったため、当初計画通りに進まなかった。しかし、皮膚移植による感作モデルとin vitroでの検討を進めることで、アロ抗原特異的記憶細胞の特徴を解析することができている。
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今後の研究の推進方策 |
アロ抗原特異的な記憶細胞がTCF-1lowPD-1hiの集団である可能性が高いことを明らかにしたが、この細胞集団を抑制するための治療効果を明確にすることができていない。ここまでの研究成果について学会報告、論文報告を実施すると共に、このアロ抗原特異的な記憶細胞の抑制方法、治療について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
アロ感作モデルにおける免疫寛容に有用な治療プロトコールの開発ができていないため、治療法開発のため次年度の研究費が必要と考えている。
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