研究課題
固形癌、特に難治性食道癌に有用なCAR-T療法を開発するために、臨床試験で細胞輸注されたTCR遺伝子導入T細胞(NY-ESO-1)のフェノタイプ解析・免疫機能解析を行い、臨床試験におけるin vivo持続性、臨床効果に関連する因子を探索した。NY-ESO-1高発現腫瘍を対象にした高親和性TCR遺伝子導入T細胞(TCR-T)輸注療法において、腫瘍縮小効果と早期のサイトカイン放出症候群(CRS; cytokine release syndrome)が発症した例がある。NY-ESO-1/TCR-T細胞輸注を実施した6例におけるCRS発症、腫瘍縮小の臨床反応と輸注TCR-T製品、輸注後の末梢血TCR-Tの免疫細胞学的解析を行った。滑膜肉腫(SS)3例、粘液型脂肪肉腫(MLS)1例、メラノーマ(Mel)1例、卵巣癌(OvaC)1例であり、SS 3例において経過中腫瘍縮小がみられた。CRSはSS 2例、Mel 1例に発症した。6例の輸注前TCR-T製品のフェノタイプ解析では、CRS発症3例は非発症3例に較べ、CD45RA(+), CCR7(-)のeffector memory T-cell (TEM) subsetが有意に多かった(p=0.008)。さらにはCRS発症3例では非発症3例に較べてCD244とCD39の発現が高かった。輸注後14日目PBMCにおいて、CRS 2例(SS、Mel)ではstem-cell-like memory T-cell (TSCM) subsetが各々12.2%、1.4%であるのに対し、CRS(-)及び腫瘍縮小(+)のSS 1例は66.4%を占めていた。これらより輸注TCR-T(製造T細胞)のフェノタイプが有意に関係することと、輸注後のTCR-Tのフェノタイプ変化と臨床反応(CRS、腫瘍縮小)の関与が推察された。
3: やや遅れている
臨床試験で細胞輸注されたTCR遺伝子導入T細胞(NY-ESO-1)のフェノタイプ解析、免疫機能解析を実施し、臨床試験におけるin vivo持続性、臨床効果に関連する因子について少数例であるが推察できており、研究成果の方向性が確認できている。輸注細胞後の体内持続性だけでなくT細胞のメモリーフェノタイプと新規の形質発現が関連する因子を見出している。CAR-T作製への応用についてやや遅れているため、2021年度の進捗を確実に進めていく予定である。
2021年度は臨床試験で細胞輸注されたTCR遺伝子導入T細胞の解析数を拡大し、2019年、2020年度の知見の精度を高めていく。さらにフェノタイプ解析・免疫機能解析についてはCyTOF解析(high-dimensional T cell profiling analysis)を完成させる。これらの解析により固形癌、特に難治性食道癌に有用なCAR-T療法のための細胞調製法が改善できると考えている。
2020年度はフェノタイプ解析・免疫機能解析の一部が実施しなかったため使用額が当初より減じた。この解析は次年度での実施となり、2021年度の解析計画は追加フェノタイプ解析・免疫機能解析とCyTOF解析(high-dimensional T cell profiling analysis)となり、それに見合う使用計画とする。
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Cancer Immunol Immunother
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