研究課題/領域番号 |
19K22657
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
芳川 豊史 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (00452334)
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研究分担者 |
武部 貴則 横浜市立大学, 先端医科学研究センター, 教授 (20612625)
伊達 洋至 京都大学, 医学研究科, 教授 (60252962)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 肺再生 / オルガノイド / 慢性呼吸不全 / 代替療法 / 人工肺 / 肺移植 |
研究実績の概要 |
肺移植は、末期呼吸器疾患に対する最後の治療として確立したが、脳死ドナー不足は世界的に重大な問題である。本邦でのドナー不足はさらに深刻で、脳死ドナーの発生数に依存しないような、「肺移植に代替可能な慢性呼吸不全に対する新規治療法」が期待される。本研究の目的は、肺移植に代替可能な慢性呼吸不全に対する新規治療技術の基盤を創出することであり、手段の一つとして、「オルガノイド」作成技術を利用することを目指す。 平成31年度については、オルガノイドの作成は、世界初の肝臓のオルガノイドを作成した共同研究者側を中心に行うという形をとり、肺、肝だけでなく腸管のオルガノイドなど、種々の器官のオルガノイドの作成が試みられた。 研究代表者らは、オルガノイド移植実験を効率よく成功させるために、まず予備実験として、胎仔肺(C57BL/6やC57BL/6-Tg・CAG-EGFPマウス)を同種に同所性移植することで、どのような効果が認められるのか、形態と機能について検討を行った。実際には、パラコート投与による傷害肺に対して切り刻んだ胎仔肺を投与し、4週間観察して種々の評価をおこなった。結果として。胎仔肺は、傷害肺に対して肺機能の改善に寄与することが分かった。同所移植した胎仔肺が機能をしていることを証明するために、肺を透明化して、胎仔肺とレシピエント肺の気道のつながりをライトシート顕微鏡で評価したが、本実験の投与方法では、明らかな連続性は確認されず、実態についてはさらなる実験系での検討を要することが分かった。現在、本実験での知見について、英文論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目標は、腎不全における人工透析、重症心不全における人工心臓のように、末期呼吸不全においても、肺移植に代替するような人工臓器を含めた新規治療法の開発を行うことである。 臨床応用までの道のりは長く険しいが、今回、オルガノイドを使用する前の段階として、マウス胎仔肺を用いた同所性移植を予備実験として行い、傷害肺の機能が改善されるというポジティブな結果を得ることができたことは、大きな収穫であった。この点で、現在までの進捗としてはある一定の結果を示すことができたと思われる。 しかしながら、今後、どのタイミングでどのような形のオルガノイドをどのような場所に移植するのかなど、本研究の肝となるについては、共同研究者の研究遂行状況と併せて検討する必要がある。また、本当にオルガノイドがいいのか、それ以外によりよい代替物があるのかなど、今後も慎重に検討していくことには変わらず、研究の進捗としては、予定より進んでいるとは決して言えない。
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今後の研究の推進方策 |
肺移植は、末期呼吸器疾患に対する最後の治療として確立したが、脳死ドナー不足は世界的に重大な問題である。本邦でのドナー不足はさらに深刻で、脳死ドナーの発生数に依存しないような、「肺移植に代替可能な慢性呼吸不全に対する新規治療法」が期待される。iPS細胞の発見後、「臓器の芽」となる「オルガノイド(organoid)」の研究が活発化している。また、腎不全における人工透析、重症心不全における人工心臓のように、末期呼吸不全においても、肺移植に代替するような人工臓器を含めた新規治療法の開発が大きく期待されている。 これまでに、研究代表者らは、肝臓のオルガノイドを世界で初めて作成した共同研究者とチームを形成し、肺や腸のオルガノイドの作成に成功した。本研究の最終目的である肺移植に代替可能な慢性呼吸不全に対する新規治療技術の基盤を創出するために、独自のオルガノイド作成技術を基礎に、同所性または異所性に、種々のオルガノイドを移植することで検討を行う予定である。 平成31年度のマウスの胎仔肺の同所性移植の予備実験結果をもとに、機能の改善だけでなく、胎仔肺とレシピエント肺の交通を形態として確認できるような投与法を検討する必要がある。なお、本予備実験結果は、2020年度には、英文論文化する方針である。 また、どのようなオルガノイドをどのような時期に、どのように投与するのか、について、現有するオルガノイド技術の限界を確認した上で、検討を行う必要がある。さらに、オルガノイド以外の技術で慢性呼吸不全の代替になる新規治療法を行えないか、同時に検討も進めていく方針である。 最後に、本研究にともなって発生する知財は、適宜、関連部署と相談しながら研究の財産として獲得していく方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が、年度途中で京都大学から名古屋大学に異動になったため。一時的に研究を中断せざるを得ない時期があり、少額であるが翌年への繰越金が出てしまった。
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