研究課題/領域番号 |
19K22659
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
新谷 康 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (90572983)
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研究分担者 |
南 正人 大阪大学, 医学部附属病院, 准教授 (10240847)
大瀬 尚子 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (10570559)
舟木 壮一郎 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (50464251)
狩野 孝 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (70528455)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 肺再生医療 / 脂肪組織由来間葉系幹細胞 / 細胞シート / 慢性閉塞性肺疾患 / 細胞培養技術 / Layer by Layer法 |
研究実績の概要 |
呼吸器領域では慢性閉塞性肺疾患(COPD)など非可逆性の慢性進行性の肺疾患が急増しており、臓器移植に代わる根治的な治療法の開発が望まれている。一方、間葉系幹細胞(MSC)は多分化能を有し免疫抑制作用も併せ持つことから、COPDに対する新たな治療法として注目されている。なかでも脂肪組織は大量のMSCを含み、脂肪組織より得られる脂肪組織由来間葉系幹細胞(ADSC)は増殖が速く細胞活性も高いため再生医療において有望な細胞ソースと考えられている。今回、「ADSC積層シートを外科的に投与する手法を開発し、COPDに対する再生医療にむけ新たな細胞移植法を確立する」ことを目的として、本研究を計画した。 ADSCは、マウスより皮下白色脂肪組織を採取し、コラゲナーゼ溶液で酵素処理し遠心分離により浮遊した脂肪細胞を除去し、専用培地でADSCを分取した。フィブロネクチンとゼラチンを交互に積層したLayer by Layer法により細胞同士の接着を誘起し、ADSCで構成される3次元組織体を作成した。Layer by Layer法により、厚みをもった細胞シートを作成することができ、また移植する細胞量も単層シートに比して飛躍的に増加させることができた。また、実際に細胞を採取して単層で培養後、24時間で重層シートを作成することができ、シート作成時間が短縮された。また、COPDに対する治療効果を評価するため、エラスターゼ吸入や肺切除モデルを用いて気腫変化を誘導したCOPDモデルマウスを作成した。 3次元組織体は脆弱であり、COPDモデルマウスへの移植手術にはさらに工夫が必要であることが判明し、ポリグリコール酸を用いた吸収性縫合補強材上での培養技術や、マトリゲルやゼラチンなどの間質成分を土台にした3次元組織体の作成などを行う必要がある。また、十分な細胞数を得るためには、ADSCを効率よく増殖させる技術の改善が必要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脂肪組織由来間葉系幹細胞(ADSC)分取、Layer by Layer法による3次元組織体作成、COPDモデルマウス作成については、研究手法を確立することができた。現在、ADSC3次元組織体を効率よくマウスへ移植する際の培養技術や手術手技の工夫を探索している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
エラスターゼ吸入や肺切除モデルを用いて気腫変化を誘導したCOPDモデルマウスに対して、移植手術操作に適したADSC 3次元組織体の培養技術を開発し、ADSC 3次元組織体からなら細胞シートを傷害肺へ貼付する手技を確立する。動物モデルでの肺気腫改善効果・肺胞再生の評価は、採取した肺組織の組織学的評価、小動物呼吸機能、小動物CT、換気血流シンチ、超偏極129Xe-MRIを用いて行い、肺胞再生に適した投与量だけでなく、COPDの病態に応じた投与時期を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
大阪大学医学部附属動物実験施設の改修にともなう実験施設の移動等により、動物実験が一部制約されたため、予定していた動物の購入等を次年度に行うこととした。次年度の動物実験に伴う動物や物品等の購入費や動物飼育に関わる人件費に、本年度繰越金を使用する予定である。
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