研究課題/領域番号 |
19K22664
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大内田 研宙 九州大学, 大学病院, 講師 (20452708)
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研究分担者 |
藤田 逸人 九州大学, 医学研究院, 助教 (40611281)
森山 大樹 九州大学, 大学病院, 准教授 (70586859)
永吉 絹子 九州大学, 大学病院, 助教 (90761015)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 消化器癌 / 胃癌 / 食道癌 / シングルセル解析 / 微小環境 / heterogeneity |
研究実績の概要 |
消化器癌はheterogeneityといわれる高度な不均一性をもっており、その不均一性は、癌細胞だけでなく微小環境を形成する間質細胞にも観察される。本研究は、シングルセル解析を用いて消化器癌の機能的なheterogeneityを明らかにし、治療抵抗性や浸潤・転移・再発に強く関わる悪性度の高い癌細胞集団やそれに関わる癌微小環境中の間質細胞集団の存在やその特性について解析することを目的として開始された。 本年度は、すでに当研究室で導入済みの10X GENOMICS社のChromium Controllerを用いて、まずは胃癌、および食道癌の手術切除標本を対象に、随時シングルセルRNAライブラリー作成、NGS解析を行った。NGS解析後のデータは、RパッケージであるSeuratを用いて解析し、単一細胞由来のRNA発現からその細胞集団の特徴や働きに着目し、微小環境解明に努めている。 上皮系組織の細胞接着は強固であり、当初は組織を生細胞の状態で単一細胞化することにも難渋したが、各種プロトコールを改良し、現在では安定して十分量の単一細胞懸濁液を作成することに成功しており、胃癌、食道癌それぞれ10症例を超えるライブラリー作成を行ってきた。手技が安定してからは、腫瘍部に加え正常粘膜部や所属リンパ節も同時に採取し、ライブラリー作成、解析を行った。 食道扁平上皮癌においては、少数の症例からの解析ではあるが、腫瘍部、正常粘膜部の両組織においてマクロファージが高い頻度で同定され、その細胞集団を再解析したところ、異なった機能を有すると考えられる複数の細胞集団があることが明らかになった。また、これらの細胞集団の分布は、腫瘍部と正常粘膜部で異なっており、さらには既存のM1,M2マクロファージなどの分類とは一致するものではないことも示唆された。この内容は令和2年度の学会発表に採択されており、発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胃癌、食道癌の手術切除標本をもとに十分量の単細胞懸濁液を作成すること、ライブラリー作成を行うこと、それぞれにおいて安定した結果を得ることができるようになった。 またNGSで得られたデータの解析についても習熟してきており、組織中の細胞を機能別にクラスター分けし、サンプル間や同一条件サンプル集団間(腫瘍部対正常粘膜部、術前化学療法の有無、など)での比較・検討を行っている。症例が蓄積されるたびに微小環境における腫瘍促進効果や抗腫瘍効果、腫瘍の免疫寛容に着目しながら解析を繰り返しており、腫瘍促進・抑制に影響を与えている特定の機能を持つ細胞集団の同定に努めている。
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今後の研究の推進方策 |
胃癌、食道癌については更なる症例蓄積に努め、随時解析を進め、解析内容をより確かなものとする。 更に、解析により特定の機能を持つ細胞集団が同定された場合には、in vitro(2D, 3D)やin vivoで増殖や、浸潤、転移、癌間質相互作用など様々な細胞特性を検討していく。 大腸癌や膵癌などの他の消化器癌についても、胃癌や食道癌で得られた手法や知見を活かし、随時サンプル採取やライブラリー作成、データ解析を開始することとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は概ね順調に進んでおり、資金を有効に使用できたため。 次年度は研究用試薬、器材などの消耗品や受託解析、論文投稿料等に使用する予定である。
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