研究代表者らは,これまでの研究からCD200が免疫抑制のみならず治療抵抗性獲得にも関与する特異な機能を有することを見出した.実際には,本研究で対象としている膵癌において,臨床検体の検討から,CD200の膵癌発現が術前化学放射線治療によってup-regulateして,治療抵抗性に関与することを見出した. これらの研究結果から,従来の化学療法等の既存治療とともにCD200を阻害し,免疫チェック阻害分子であるPD-1を併用して阻害すれば,既存治療の抵抗性を克服するとともに,より強力かつ有効な癌集学的治療効果が誘導できるとの着想を得た.本研究では,CD200を阻害し得る小分子化合物を新たに探索し,PD-1抗体治療および化学放射線治療との併用によって,既存治療に対する治療抵抗性および抗体治療の限界を克服し,根治を目指した新たな膵癌集学的治療戦略の開発を行うことを目標としている.当該年度は,膵癌以外にも大腸癌や胃癌等でも術前治療とCD200との発現について検証し,膵癌で得られた知見の普遍性を検証している.概ね同様の結果を示唆する研究成果が得られているが,現在は科学的再現性を確認している.また現在,CD200/CD200Rを標的とする小分子化合物スクリーニングおよび候補分子の選定に難渋しているが,今後候補となる分子が入手ができれば小分子化合物のCD200機能阻害効果をスクリーニングする.具体的には,放射線照射によってヒト膵癌細胞株に誘導されるCD200発現を小分子化合物Xで抑制できるかを検討する.また,膵癌細胞株4x10^5を化合物Xとともに10%FCS含有 RPMI-1640にて培養し,放射線照射を行い,4-7日後にFACSにてCD200発現を解析する.これらの結果に基づき,臨床応用に向けてさらにin vivo研究へ進めていく予定である.
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