研究課題/領域番号 |
19K22671
|
研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
武輪 能明 旭川医科大学, 医学部, 教授 (20332405)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
|
キーワード | 生体吸収性素材 / 移植片(グラフト) / 生体適合性 / 帯電性 / 圧電性ポリ乳酸 / 細胞埋入 / 自己組織移植片 |
研究実績の概要 |
本研究では、心臓弁や血管および心室壁などの欠損部再建手術に使用する生体吸収性素材の移植片(グラフト)を開発するため、以前より注目されていた生体適合性の良いポリ乳酸のうち、帯電性のある圧電性ポリ乳酸繊維に着目し、今年度はこの繊維が生体に与える反応について検討を行った。 方法は、モノフィラメントのポリ乳酸繊維24本を撚り合わせて作製した撚糸2本を引き揃えて編み圧電性ポリ乳酸繊維のニット布を作製し、撚糸の1 mあたりの撚り数を2000, 1000, 700, 500, 300回の5段階に変えて、引き揃えは右撚り(S糸)と左撚り(Z糸)の組み合わせ(SZ)とした5種類と、500回の撚糸のみ引き揃えの組み合わせをS糸2本(SS)、Z糸2本(ZZ)にした2種類の計7種類を用意した。これらを芯材に巻き付けたサンプルとし、芯材のみのControlを含め計8種類とし、全身麻酔下で成ヤギの背腹部皮下に埋入した後、2ヶ月後に周囲に形成された皮下組織体と共にサンプルを取り出し、繊維内へ埋入した組織の状況について観察した。 その結果、すべてのサンプルで形成されていた層は主に線維芽細胞とコラーゲンからなり、繊維の間隙にも組織が侵入していた。その他に組織内に認められ炎症細胞の割合はControlで極めて少なく、圧電性ポリ乳酸繊維の周囲に多く見られたが、撚り数が多い程少ない傾向にあった。また、撚糸の引き揃えは、ZZで炎症細胞の割合が少なく、SS、ZSの順に多くなる傾向にあった。また、顕微鏡的観察でもすべての圧電性ポリ乳酸繊維は線維構造を維持していた。 以上より、圧電性ポリ乳酸繊維の撚糸の撚り方(巻く方向の組み合わせおよび撚り数)によって繊維内への細胞埋入の程度が変化することがわかった。さらに生分解性能については、今回の植え込み期間である2ヶ月では、圧電性ポリ乳酸繊維に構造の変化するような分解は見られなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者自身に研究組織の異動があったが、その前に実験を遂行し得たので、順調に進展することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今回の研究で、圧電性ポリ乳酸繊維の撚糸の撚り方(巻く方向の組み合わせおよび撚り数)によって繊維内への細胞埋入の程度が変化することがわかったが、この変化が、ポリ乳酸繊維の圧電性が組織形成に影響を与えているのか明らかにするため、圧電性を持たないポリ乳酸繊維と比較する必要があると考えられる。 さらに生分解性能については、今回の植え込み期間である2ヶ月では、圧電性ポリ乳酸繊維に構造の変化するような分解は見られなかったが、どれくらいの期間でどう生分解が進むのか今後調査する方針である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和2年1月に研究代表者の研究施設異動により、一時的に動物実験が施行できなくなった。また、令和2年2月頃より、コロナウィルス感染対策の影響により、予定していた海外出張や国内出張、学会参加などが中止となった。これらについては、令和2年度に施行する予定である。したがって、令和元年度の未使用額を令和2年度に繰り越す方針である。さらに令和2年度には当初予定の実験等を当初から当該年度に計上していた予算で施行する方針である。
|