研究課題/領域番号 |
19K22672
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岩崎 倫政 北海道大学, 医学研究院, 教授 (30322803)
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研究分担者 |
照川 アラー 北海道大学, 医学研究院, 助教 (00723074)
古川 潤一 名古屋大学, 糖鎖生命コア研究所, 特任教授 (30374193)
宝満 健太郎 北海道大学, 医学研究院, 博士研究員 (40823331)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | 免疫原性 / スフィンゴ糖脂質 |
研究実績の概要 |
軟骨欠損に対する現在の治療戦略には、骨軟骨自家移植、軟骨細胞移植、間葉系幹細胞移植、マイクロフラクチャー手術がある。しかし、移植された細胞の長期生存は、レシピエントの大部分において得られていない。これは、in vitroで継代した間葉系幹細胞や軟骨細胞の生理的、免疫学的挙動や細胞糖鎖プロファイルが変化することが最も原因だと考えられる。本研究では、軟骨細胞および骨髄間質細胞(BMSC)の免疫応答および糖鎖プロファイルの変化に関連する継代数を決定することを目的とした。BMSCや軟骨細胞などの細胞をin vitroで継代すると、細胞の生理的・免疫的な挙動が変化することを明らかにし、継代培養された細胞はマクロファージを含む免疫細胞と交互作用することを突き止めた。また、軟骨細胞の継代細胞とマクロファージとの共培養において、マクロファージの活性化には、継代細胞との直接的な相互作用が必要であることを認めた。直接共培養モデルにおいて、継代3軟骨細胞や継代6間葉系幹細胞と共培養したマクロファージでは、一酸化窒素(NO)やTNF-αのレベルが顕著に上昇した。これらの結果から、軟骨細胞は継代2まで、間葉系幹細胞は継代5まで使用可能であることが明らかになった。一方で、免疫細胞の活性化に重要な役割を果たす糖脂質の糖鎖プロファイルも、継代によって変化することが明らかになった。GD1aの発現量は継代によって増加し、GD3からGD1aへの生合成の流れが示された。この糖鎖変化を制御することによって、直接共培養モデルの炎症性サイトカインの産生が抑制されるならば、免疫細胞の活性化に重要な役割を果たす糖鎖プロファイルであることを証明することになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞の継代数を増やすと、マクロファージが活性化し、炎症性サイトカインの産生が促進されることが実証され、その反応を起こす継代数にはプラトーが存在した。これらの結果は、マクロファージが継代による移植細胞表面の変化を認識し、免疫反応の活性化や継代細胞のクリアランスにつながっている可能性を示唆している。限定された継代数に対して、包括的糖鎖スクリーニングを実施したところ、標的とするサブグライコームがスフィンゴ糖脂質のGD3に絞られた。この標的糖鎖分子に関して、単球のIL-6およびIL-10産生を増加させる報告はあるが、マクロファージにおける知見はこれまで出ていない。我々の保有する遺伝子改変マウス(GD3ノックアウトマウス)から軟骨細胞を採取し、直接共培養モデルによる免疫学的評価を実施するに至っている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、スフィンゴ糖脂質に属する標的糖鎖分子GD3を形成するために必要な糖転移酵素遺伝子の発現抑制マウスから軟骨細胞を単離し、継代培養された軟骨細胞とマクロファージとの交互作用を直接共培養モデルにより解析する。我々は以前に、対象とする糖転移遺伝子のノックアウトマウスを扱った実験の実績があり、同様の手法によってGD3欠損軟骨細胞を採取し、本研究の評価系へ供する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍における研究活動の制限、必要試薬の輸送遅滞により次年度へ持ち越される実験が発生した。次年度には、標的糖脂質の生合成関連酵素を欠損させた糖転移遺伝子ノックアウトマウスを用いて免疫応答実験を遂行する計画である。
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