研究課題
軟骨再生医療において、自家細胞移植は広く認められた治療法の一つである。細胞源として軟骨細胞や骨髄間葉系幹細胞(BMSC)が主体であるが、いずれも細胞数を確保するために拡大培養が必要とされる。一方で、自家細胞であるにも関わらず、移植された細胞の長期生存は認められず、移植後比較的早い時期に消失する。これは細胞の免疫応答を変化させる要因が継代培養に存在していることを示唆している。我々は過去に細胞分化に伴う糖鎖変化について報告してきた。糖鎖は、細胞内外のタンパク質や脂質に付与され、情報伝達や環境変化に鋭敏に反応する分子である。継代培養により細胞糖鎖プロファイルが変化することで間葉系幹細胞や軟骨細胞の生理的、免疫学的特性が変化すると仮説を立て、研究を行った。その結果、試験管内でBMSCや軟骨細胞の継代を繰り返すと、免疫反応が変化することが確認され、繰り返し培養された細胞がマクロファージを含む免疫細胞と直接作用することが明らかとなった。さらに、継代に伴い細胞の糖脂質の糖鎖プロファイルも、培養によって変化することが確認された。ガングリオシドGD3からGD1aへの生合成経路の活性化が認められたため、GD3ノックアウト(GD3 KO)マウスを作出し、そこから単離された軟骨細胞とマクロファージとの免疫応答変化について評価を行った。GD3KO継代細胞とマクロファージの直接共培養モデルは、野生型マウスと比較してIL-6やMMP13の発現上昇が有意に抑制されていた。継代細胞に生じる免疫応答は、GD1aを抗原としてマクロファージによる免疫原性の高い標的として機能した可能性が示唆された。
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