研究課題/領域番号 |
19K22674
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
岩瀬 明 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (20362246)
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研究分担者 |
平川 隆史 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (80375534)
中村 智子 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (40732681)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 子宮内膜症 / 線維化 / 局所炎症 / TCF21 |
研究実績の概要 |
1)TCF21発現と局所炎症、ECM産生・線維化との関連 正所性子宮内膜(内膜症合併有・無)、子宮内膜症(腹膜病変・卵巣子宮内膜症性嚢胞・深部内膜症)組織を用いTCF21発現を評価した。発現は弱い順に、子宮内膜症合併無し正所性子宮内膜<子宮内膜症合併有り正所性子宮内膜<腹膜病変<卵巣子宮内膜症性嚢胞<深部内膜症であった。これは病変局所の炎症・線維化の重症度と相関していると予測された。二重染色データでは、TCF21とIL-4,-13, TGFbとの共局在をみとめた。また病変組織から分離培養した正所性子宮内膜間質細胞、子宮内膜症間質細胞でのTCF21発現についても、組織染色と一致する傾向をみとめた。培養子宮内膜症間質細胞では、IL-4,-13でTCF21発現が誘導されることを見出した。子宮内膜症間質細胞でのTCF21発現をsiRNAで抑制したところ、細胞の増殖能、浸潤能が低下することを見出した。 2)TCF21発現とDNA損傷・癌関連遺伝子変異との関連 正常子宮内膜および子宮内膜症病変(卵巣癌併存有・無)からレーザーマイクロダイセクションにて上皮細胞を分取しDNAおよびRNAを採取した。またレーザーマイクロダイセクションに用いた切片の線維化をマッソントリクローム染色で、低酸素マーカー(HIF-1a)を免疫組織染色で評価した。 3)遺伝子追加導入による新規子宮内膜症モデル作製 予定通り自家細切子宮移植により腹腔内に異所性子宮内膜組織が生着することを確認した。in vivo遺伝子導入ベクターについては、現在調整中であり早期の完成を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来初年度には、2)TCF21発現とDNA損傷・癌関連遺伝子変異との関連に関して、レーザーマイクロダイセクションで得られた検体の網羅的解析(RNAseq, 全エクソーム解析)を行う予定であったが、卵巣癌併存有無での検体選定に慎重な病理学的評価を行ったこと、倫理委員会での承認に時間を要したことにより、2年目に持ち越しになった。5月中には行える予定であったが新型コロナウイルス感染症の感染拡大により実験を停止しており、もう少し遅くなる見込みである。 その他の実験については計画当初の予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1) TCF21発現とEMT, 筋線維芽細胞変化、ECM産生の関連 TCF21抑制による細胞の表現型変化を確認するために、twist, snailなどの発現解析(EMT)、αSMA発現解析(筋線維芽細胞への変化)、コラーゲン・フィブロネクチン・ペリオスチンなどのECM産生(組織線維化惹起)について比較検討する。 2) TCF21発現とDNA損傷・癌関連遺伝子変異との関連 正常子宮内膜および子宮内膜症病変からレーザーマイクロダイセクションにて上皮細胞を分取し採取したDNAおよびRNAを用い網羅的解析を行う。DNAについては、ARID1A, KRAS, PIK3CA, PTEN等の遺伝子変異有無に着目する。DNA損傷については連続切片における53BP1の免疫染色で評価する。抽出RNAについてはRNAseqを行う。以上より総合的に、TCF21陽性セルリネッジでの線維化変化と低酸素環境、DNA変異についての関連解析を行う。 3) 遺伝子追加導入による新規子宮内膜症モデル作製 異所性子宮内膜生着マウスにin vivo遺伝子導入用ベクターを腹腔内投与する。異所性子宮内膜細胞でのTCF21発現を促進した結果、ヒト子宮内膜症類似の病変の線維化およびDNAの損傷が亢進したかどうか検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費、人件費・謝金については実験進捗の遅れとCOVID-19感染拡大により年度末の試薬の調達が遅れたため次年度に繰り越すことになった。実験は進捗しており、令和2年度上半期に当初計画通り(癌関連遺伝子変異の網羅的解析等)の支出を行う予定である。 旅費については、COVID-19感染拡大により年度末の国際学会出張を中止したためであるが、令和2年度については状況が許せば国際学会での発表を1回は行う予定である。
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