研究実績の概要 |
免疫組織染色においてTCF21の発現が、重症子宮内膜症(深部内膜症)>中等度子宮内膜症(子宮内膜症性卵巣嚢胞)>>子宮内膜症患者の正常子宮内膜>非子宮内膜症患者の正常子宮内膜、という結果を得た。蛍光染色にてTCF21発現と炎症性サイトカインIL-4, IL-13, 組織の線維化に関与するTGF-bの発現に共局在があることも見出した。また細胞外マトリクスの一種であるペリオスチンにも同様の傾向があった。これらの結果は、子宮内膜症発症および線維化の過程において、子宮内膜症細胞から分泌されるTCF21が組織の線維化・局所炎症と関連することを示唆するものであった。 上記結果をインビトロで検証するため、正常子宮内膜間質細胞にTCF21発現ベクターを、子宮内膜症間質細胞にTCF21 siRNAを導入した。TCF21発現誘導で、IL-4, IL-13, TGF-b,ペリオスチン産生が誘導された。またsiRNAによる抑制では、これら分子が抑制されることを見出した。以上より、子宮内膜症組織変化の特徴である局所炎症・組織の線維化は子宮内膜症細胞から分泌されるTCF21依存性であることが解明された。 続いて子宮内膜症間質細胞におけるTCF21発現細胞リネッジの性質を検討するため、RNAシーケンスでの網羅的解析を試みたが、解析に十分な精度の検体を得ることができなかった。さらに、同種移植(子宮細切腹腔内散布)による子宮内膜症モデルマウスを作製した。本モデルでは異所性子宮内膜組織ではTCF21発現がみとめられないため、TCF21遺伝子をインビボで異所性子宮内膜組織に導入する系の確立を目指したが、遺伝子導入に適切な条件を見出すことができなかった。
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