研究課題
昨年度までの検討で用いたマウス骨細胞由来IDG-SW3は、Sostなどの骨細胞に特異的な遺伝子の発現誘導が認められるまでに2週間程度の培養期間が必要であり、遺伝子改変等の処理の煩雑さが検証を難しくしていた。そのため、骨細胞モデル細胞として汎用されるMLO-Y4細胞も併せて入手し、それぞれの培養条件を決定した上で、種々の刺激による膜小胞分泌量の変化を検証した。その結果、IDG-SW3細胞において高酸素培養条件によって細胞老化が誘導されると、培養上清中に含まれるRANKL濃度の上昇が認められ、さらに、これを段階遠心によって分画するとエクソソーム等の膜小胞を豊富に含む分画で特にRANKLの上昇が確かめられた。一方で、MLO-Y4細胞での検討からは、アポトーシスを起こした細胞から放出されたATPが周辺の細胞におけるRANKLの発現量を上昇させることが確認され、モデル細胞は異なるものの、複数のストレス下で骨細胞による破骨細胞分化制御が行われている可能性が示唆された。それぞれの細胞由来膜小胞に搭載されているRANKL以外の分子についても解析を進めており、将来的に、これらを標的とした抗体分子の投与によって骨代謝回転の制御が可能になることを期待している。また、骨細胞の膜小胞選択的に蛍光プローブを発現させることを計画したTgマウスに関して、受託サービスでの作出を依頼し、研究室内で繁殖・維持を行なっている。十分な数が確保され次第、RANKL投与や卵巣摘出などの骨代謝回転を促進させた環境で、骨組織中で膜小胞の放出が増加するのか、また分泌された膜小胞は破骨細胞や骨芽細胞など、周辺の骨組織を形成する細胞群にどのように作用しているのかを観察する。一連の解析により、骨リモデリングの起点となる破骨細胞形成が時間的、また空間的にどのような制御を受けているのかに関して、重要な知見を得ることが可能と考えている。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 備考 (1件)
Pharmacology & Therapeutics
巻: 218 ページ: 107682~107682
10.1016/j.pharmthera.2020.107682
Journal of Bone and Mineral Metabolism
巻: 39 ページ: 27~33
10.1007/s00774-020-01157-3
https://plaza.umin.ac.jp/~todaiyak/