研究課題
緑内障は、網膜神経節細胞の軸索である視神経がダメージを受け、神経細胞生存に必要な物質をやりとりする軸索輸送が停止することで、網膜神経節細胞が細胞死を起こすため、視機能障害が進行し、最終的には失明に至る日本人の失明原因トップに位置する難治性眼疾患である。眼圧が高いほど、視神経障害を生じやすく、眼圧をより低く下げる治療が行われている。しかし、その眼圧に対する網膜神経節細胞の脆弱性には個人差があるため、その患者に対してどの程度の眼圧下降が適切なのかを判定することはできない。そこで、緑内障の進行を予測することを目的に、細胞死の前段階で生じる軸索輸送障害を可視化する研究をおこなった。我々は、網膜神経節細胞のミトコンドリアを蛍光標識したマウスであるCFP-Thy1-mitoトランスジェニックマウスのDNAコンストラクトを利用し、蛍光ラベルの遺伝子をYFPに置換したYFP-Thy1-mitoトランスジェニックマウスを新たに作成した。作成したトランスジェニックマウスにおいて蛍光標識されたYFPの蛍光波長は、医療用OCT機器であるスペクトラリス光干渉断層計に搭載された共焦点レーザー走査型眼底検査装置(HRA)で検出することができた。マウスの眼底に焦点が合うようにデザインされたコンタクトレンズを作成し、HRAで眼底を観察することができた。網膜神経節細胞の軸索内に分布するミトコンドリアをen faceのビューで動画撮影することができた。蛍光標識されたミトコンドリアは、視神経乳頭周辺から網膜周辺まで一様に分布していることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
当初の目的である網膜神経節細胞の軸索内におけるミトコンドリアをマウスの瞳孔を介して眼底を観察することで、動画撮影することができているため、今後、順調に実験が進展することが期待できる。
レーザーで上強膜静脈を焼却して、眼圧を上昇させたマウスの緑内障モデルを作成し、眼圧上昇後3日目のミトコンドリアのライブイメージを行う。スペクトラリス光干渉断層計に搭載された共焦点レーザー走査型眼底検査装置(HRA)を用いて、そのマウスを経瞳孔的に、網膜神経線維層に分布するミトコンドリアを撮像し、その分布を解析する。
実験に必要とした動物の注文匹数が予定よりも入荷が遅れたため。次年度で動物実験の不足分を購入する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://ganka-fukuimed.jp