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2020 年度 実施状況報告書

母体状態・薬剤が胎生期器官の細胞周期に及ぼす影響:子宮内ライブ評価系の構築

研究課題

研究課題/領域番号 19K22683
研究機関名古屋大学

研究代表者

宮田 卓樹  名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (70311751)

研究期間 (年度) 2019-06-28 – 2022-03-31
キーワードライブイメージング / 二光子顕微鏡 / 発生 / マウス / 細胞増殖 / 細胞移動 / 細胞分化
研究実績の概要

本研究は,ヒト胎児の種々の組織内で進行する器官形成に対して母体の全身状態の急性変化や薬剤がどのような影響を及ぼしうるかに関して,産婦人科学はもとより,幅広い医学領域にとって有用となる全く新しい知見を得ることをめざし,マウスを用いた鋭敏な評価系,特に生体内の(intravitalな)ライブイメージング系を開発することを目指して実施されてきた.昨年度は,まず,細胞周期インディケータであるFucciマウスを用いた観察から着手し,母マウス麻酔,子宮・胎仔の保持のうえ,大脳皮質原基の神経幹細胞が脳室面で分裂する様子を,世界で初めて子宮内ライブ観察することに成功した.また分裂の前後の核・細胞体の移動もとらえることができた(論文発表).
引き続き,今年度は,麻酔下の母体から露出した子宮内で生育中のマウス胎仔の脳原基の中のミクログリアのライブ観察に取り組んだ.ミクログリアは免疫系の細胞であるが,胎生早期に脳原基に移入することが知られている.そして大脳原基の壁の中で動きながら多様な役割を果たすことが示唆されつつあった.しかし「動き」のライブ観察の方法として用いられてきたスライス培養においては,外科的操作が炎症性反応を惹起するなどしてミクログリア挙動に影響を与える可能性があったため,真の生体内での intravital観察が求められていた.本研究では CX3CR1トランスジェニックマウスに対して子宮内で生育中のマウス胎仔の脳原基の中のミクログリアのライブ観察を世界で初めて達成した.そして,動きの分子メカニズム,動きの意義に対する解析結果と合わせて論文発表した(Nat. Commun.11, 1631, 2020).これらを通じて,哺乳類の発生研究の分野における挑戦の一歩を確かに示すことができた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究「母体状態・薬剤が胎生期器官の細胞周期に及ぼす影響:子宮内ライブ評価系の構築」は,器官形成期に,ヒト胎児の種々の組織内で進行する細胞周期に対して母体の全身状態の急性変化や薬剤がどのような影響を及ぼしうるかに関して,産婦人科学はもとより,幅広い医学領域にとって有用となる全く新しい知見を得ることをめざした.
「鋭敏な解析系」としての「麻酔下の母体から露出した子宮内で生育中のマウス胎仔に対する二光子顕微鏡観察」の立ち上げ,細胞挙動の観察は,達成できた.しかし,「急性変化」や「薬剤」による影響を精査し,ライブ観察した細胞挙動の変化を評価するレベルにまでは到達できなかった.これは,「急性変化」や「薬剤」による影響を徹底的に調べ得るほどにまで十分に長い観察時間,十分に多い観察達成の機会・回数が得られるまでには,観察の諸条件を至適化できなかったことによる.その点に鑑み,総合的には,やや遅れているとの判断となった.

今後の研究の推進方策

麻酔下の母体から露出した子宮内で生育中のマウス胎仔の脳原基の中の細胞に対して一定の観察が達成できたが,いくつかの大きな課題がある.
(1)胎仔の生育:母体の体温や呼吸等の全身管理は一定程度行なっているが,臍帯血流や胎盤の扱い・保持の仕方などが難しく血流途絶に陥るなどに至りそれが胎仔の状態を悪化させた可能性がある.この点はイメージング技術確立のために改善が必須であることは言うまでもないが,臨床的観点から将来的に種々の擾乱を加えるなど追求していくべきとも思える.
(2)視野の揺動:胎仔自体の動きや子宮・母体の動きによる影響などで,XY軸のずれが認められた.画像編集過程で補正できるケースもあったが解析を困難にするので改善が強く求められる.
(3)観察深度:二光子顕微鏡の性能限界のため深度について物足りなさがあった.増感装置付きの機種での観察などハード面での対応を考える.
これらの問題点は挑戦してみて初めて遭遇した,あるいは実感できた具体的課題である.こうした課題を知り得たことも本研究の貴重な副産物であった.こうした点の改善が「急性変化」や「薬剤」による影響を調べ得るような観察レベル向上につながると期待する.

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染症の影響によるもの。
人件費(子宮内ライブ観察系の条件検討および条件改善のための技術補佐員)と消耗品(子宮内ライブ評価系の条件検討に必要な酸素計測のためのマイクロセンサーユニアンプ用電極)に充てる予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Transient microglial absence assists postmigratory neurons in proper differentiation.2020

    • 著者名/発表者名
      Hattori Y, Naito Y, Tsugawa Y, Nonaka S, Wake H, Nagasawa T, Kawaguchi A, Miyata T.
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 11 ページ: 1631

    • DOI

      10.1038/s41467-020-15409-3

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Two-photon microscopic observation of cell-production dynamics in the developing mammalian neocortex in utero.2020

    • 著者名/発表者名
      Kawasoe R, Shinoda T, Hattori Y, Nakagawa M, Pham TQ, Tanaka Y, Sagou K, Saito K, Katsuki S, Kotani T, Sano A, Fujimori T, Miyata T.
    • 雑誌名

      Dev Growth Differ

      巻: 62 ページ: 118-128

    • DOI

      10.1111/dgd.12648

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 大脳皮質の発生における力学2020

    • 著者名/発表者名
      宮田卓樹
    • 雑誌名

      Clinical Neuroscience

      巻: 38 ページ: 1510

    • 査読あり
  • [学会発表] 脳室面に存在するElast inは、発生期大脳の力学的特性を担うことで脳発生に関与している2021

    • 著者名/発表者名
      篠田友錆,宮田卓樹
    • 学会等名
      第126回日本解剖学会全国学術集会
  • [学会発表] 胎生期大脳におけるミクログリア分布の時空間的制御とその生理学的意義2020

    • 著者名/発表者名
      服部祐季、宮田卓樹
    • 学会等名
      第 10 回名古屋大学医学系研究科・生理学研究所合同シンポジウム

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公開日: 2021-12-27  

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