研究課題/領域番号 |
19K22685
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮本 享 京都大学, 医学研究科, 教授 (70239440)
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研究分担者 |
荒川 芳輝 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (20378649)
杉山 弘 京都大学, 理学研究科, 教授 (50183843)
上久保 靖彦 京都大学, 医学研究科, 特定教授 (60548527)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | がん幹細胞 / グリオーマ / ステムネス / マスター転写因子 / SOX2 / 転写ネットワーク / 転写活性制御 |
研究実績の概要 |
ステムネスを示すがん幹細胞(cancer stem cell)が、腫瘍細胞性ヒエラルキーを形成し、腫瘍再構築や治療抵抗性の原因となる。グリオーマは、化学療法・放射線治療に抵抗性であり、再発は必然で致死性の高い悪性脳腫瘍であり、ステムネスを示すがん幹細胞が治癒困難な原因である。グリオーマのステムネスを制御するマスター転写因子としてPOU3F2、SOX2、SALL2、OLIG2が同定された。これらの転写因子が相互作用することでグリオーマのステムネス維持に必要な転写ネットワークを形成する。我々は、転写因子のシスエレメントに結合することで転写活性を制御(スイッチ)する核酸類似化合物の開発に取り組んでいる。そこで、本研究では、転写因子のシスエレメントに結合することで転写活性を制御(スイッチ)する核酸類似化合物の開発に取り組んだ。グリオーマのステムネス維持を制御するマスター転写因子であるPOU3F2, SOX2, SALL2, OLIG2を標的とした核酸類似化合物の開発を進めた。各転写活性スクリーニングからSOX2抑制に有効な核酸類似化合物XXXを同定した。核酸類似化合物XXXは、グリオーマ細胞に対して強い細胞増殖抑制作用を示した。さらに、核酸類似化合物XXXはがん幹細胞スフェアを崩壊した。mRNAアレイでは多数の遺伝子発現に変化が認められ、転写ネットワークに大きな作用を示し、ステムネス・シグネチャーが大きな影響を認めた。さらにグリオーマ細胞の核酸類似体による細胞シグナル動態を解析することで、細胞死、細胞周期制御に関わる細胞シグナルに破綻を来すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
十分な準備の上で研究計画を進めており、予定通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究により、各転写活性スクリーニングからグリオーマのステムネス維持を制御するマスター転写因子であるSOX2抑制に有効な核酸類似化合物XXXを同定した。核酸類似化合物XXXは、グリオーマ細胞に対して強い細胞増殖抑制作用を示し、mRNAでは多数の遺伝子発現に変化が認められ、転写ネットワークに大きな作用を示していた。そこで、核酸類似化合物XXXによるエピゲノム動態について解析を予定している。さらに、マウス脳腫瘍モデルによる核酸類似化合物XXXの有効性・毒性試験を行い、臓器・脳内薬剤分布、各臓器における有害事象探索、腫瘍に対する作用効果を同定し、他の核酸類似化合物と比較する。細胞毒性がかなり強いと予想されたために、マスター転写因子を阻害する核酸類似化合物の改良を検討する。これらの課程を介して、核酸類似化合物XXXを用いた新しい治療ストラテジーの確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19で出張、研究時間が短縮したためである。しかし、実験計画は予定通り進んでいる。
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