研究課題
我々は、骨粗鬆症性骨折後の癒合不全や骨腫瘍摘出後の骨欠損に対する再生医療を目的とした骨芽細胞誘導技術を報告した。すなわち、ヒト線維芽細胞にRunx2、Osterix、Oct4、L-Mycの4遺伝子を導入することで、線維芽細胞の90%以上を、高い骨基質形成能を有する骨芽細胞にコンヴァートできる(ダイレクト・リプログラミング、またはダイレクト・コンヴァージョン)。さらに遺伝子を導入しなくても1種類の化合物を添加して培養するだけで、ヒト線維芽細胞から骨芽細胞を高い効率で誘導することにも成功した(ケミカル・ダイレクト・コンヴァージョン)。とくに後者では、遺伝子導入によって染色体上の遺伝子がランダムに活性化された細胞が、移植後に腫瘍化する危険性がないので理想的である。さらにもし骨芽細胞だけでなく軟骨細胞も誘導できれば、変形性関節症などの軟骨疾患に対する再生医療に新しい選択肢を提供しうると期待できる。そこで本研究では、培養条件の最適化等を通じて軟骨細胞へのケミカル・ダイレクト・コンヴァージョン法の確立と得られた細胞のキャラクタリゼーション等を行い、有益な結果を得た。本研究成果は、骨と軟骨の両方にダメージがある変形性関節症や関節リウマチの患者に、自家骨芽細胞と自家軟骨細胞を同時に大量に作って両方の移植を行うなどの新しい治療法にも応用しうる可能性が考えられ、現実的な骨軟骨疾患の再生医療に大きく寄与することが期待できる。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件)
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