研究課題/領域番号 |
19K22693
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
羽鳥 恵 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任准教授 (90590472)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 概日リズム |
研究実績の概要 |
目に存在する光受容細胞は視細胞層を構成する桿体・錐体だけではない。哺乳類の網膜神経節細胞の2-3%は青色光感受性GPCRであるメラノプシンを発現している。Melanopsin-expressing RGC(mRGC)は桿体・錐体に次ぐ第三の光受容細胞として、概日時計の光応答や瞳孔収縮などの視覚以外の光応答、すなわち非視覚応答を引き起こす。桿体・錐体は100年に渡る研究の蓄積があるのに対し、メラノプシンは発見されてから15年程度しか経っておらず、その分子機能と制御機構を明らかにすることは他のGPCRとの差、つまり受容体としての性質の理解につながる。光環境の変化による概日時計の攪乱は鬱や肥満症など多様な疾患と関連しており、メラノプシンの理解はこれらの疾患の予防と治療にもつながると期待できる。さらに、メラノプシン遺伝子破壊マウスを用いた解析により睡眠、学習や気分への関与が報告されている。ごく最近になり日常生活に普及した白色LEDの主成分は青色であり、青色光が健康状態に与える影響の理解は喫緊の課題である。感覚機能は古典的に視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚に分類されるが、「無意識の感覚」である非視覚応答を理解したい。一方、時計振幅を増大させる目的でマウスの摂食時間を8時間に制限したところ、食事量を減らすことなく肥満や関連する病態が防がれた(時間制限摂食;Cell Metab 2012等)。本申請では光と食の両入力因子の相互作用について、非視覚応答が概日時計を介して肥満代謝に影響を与える可能性の検証に挑戦している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
メラノプシン破壊マウスを食事誘導性肥満の条件下に置き、野生型マウスと効果を比較したところ、メラノプシンの肥満への影響を示す重要なデータを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
光と食事の統合的な研究は未開拓分野であり、両者がどのような相互作用により時計及び代謝を制御しているのか、恒常性維持ネットワークの解明を目指す。中枢と末梢の時計相互作用、および非視覚光応答と代謝制御における新しい概念を提供する。
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次年度使用額が生じた理由 |
既存の機器などを最大限に活用した結果、当初の予定よりも支出を抑えることができた。この分を次年度の消耗品費にあて、効率的に研究を進めたい。
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