研究課題/領域番号 |
19K22696
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
八田 稔久 金沢医科大学, 医学部, 教授 (20238025)
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研究分担者 |
森 健策 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (10293664)
松原 孝宜 金沢医科大学, 医学部, 協力研究員 (30727649)
坂田 ひろみ 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (50294666)
塚田 剛史 金沢医科大学, 医学部, 助教 (90647108) [辞退]
友杉 充宏 金沢医科大学, 医学部, 助教 (60533429)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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キーワード | 脳 / イメージング / スキャナ / 透明化 / ヒト |
研究実績の概要 |
ヒトの脳全体を、シナプスレベルの解像度かつ多チャンネル蛍光で高速スキャニングするための統合的プラットフォームの確立を目指す。具体的には、超高速イメージング装置Cell Voyager 7000 (CV7000・横河電機)を改造し、ヒト大脳前額断面半側全面をカバーする超広視野高速3Dスキャナの開発を行う。金沢医科大学に導入済みのCV7000は、これまでの年次改造ならびに制御ソフトウエアのアップデートによって、スペック的には標準的な成人ヒト脳の前額断面半側をカバーする仕様が得られている。また、ヒト大脳半側に対応する大型スライドアダプタの試作品2種を作成した。金属削り出しのものは対物40倍まで観察可能であったが、3Dプリンタで作成した樹脂製のアダプタは対物10倍以上ではオートフォーカス機構が動作しなかった。ガラス面とレンズ間の距離が正確に出ていないことが原因と考えられ、精度の面で更に検討が必要であった。また、我々が開発した迅速透明化プロトコルRAP法の、厚切り脳切片への応用について検討した。細胞骨格、膜蛋白質、転写因子、その他細胞質に分布する蛋白質に分けてマウス脳切片を用いて検討を行った。マウス脳を用いて確認したところ、細胞骨格や細胞質蛋白質の一部について、蛍光免疫染色後にRAP法を適用することで、飛躍的な深部観察能力の向上が確認できた。二重免疫染色についても問題なくRAP法を適用可能であった。しかしながら、ホルマリン固定ヒト大脳は、容易に脱色・透明化されないことが明らかとなったため、ヒト脳に最適な透明化処理法の検討が必要である。また、既存のほとんどの高屈折率性のマウント液で、蛍光核染色が脱色されてしまう(PIは使用可能)。多重染色の可能性の面からも、蛍光核染色に対して柔軟に使用可能な高屈折率性マウント液の開発が必要であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和2年度までの取組によって、取り組むべき課題が明確化され、令和3年度に重点的に研究を進める予定であった。しかし、予期しなかったCOVID-19感染拡大の遷延化によって、年間を通して学生教育への対応に膨大な時間を割かざるを得ない状態が続いたことや、スライドアダプタの試作とそれに合わせたイメージスキャナの調整を含め、外部の製作技術者の学内への立ち入り制限や、逆に申請者らの製作会社への持ち込みが制限される状況が続いたため、研究の実施に大きな支障が生じ、研究期間の延長を申請した。このような理由により、当初の研究計画より大幅に遅れていると評価せざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
【スライドアダプタの製作】コストの面からは3Dプリンタのほうが優れているものの、精度の面で金属削り出しのものに劣ることが分かった。CV7000はフォーカスも自動制御されているため、アダプタの精度がCV7000の機能的な足かせとなる。そのため、いかにコストパフォーマンスの高いアダプタの製作を行うかがカギとなる。 【スライド標本作製法・新規スライドフォーマットの開発】RAP処理した標本を最終的に高屈折率性マウントに浸漬し、それをスライドガラス状に保定することが出来る形状のガラスおよびアダプタの組み合わせを考案する必要がある。望ましくは、厚切りの脳切片を高屈折率性マウント液に浸漬した状態で封じ込める、あるいはガラス板上で固相化することが出来ないかを検討する。これにより、透明化スライドの持ち運びが飛躍的に安全になる。 【ヒト脳の脱色・透明化処理法の確立】RAP法および改変法によって、マウス脳の脱色・透明化は容易に達成されるが、ヒトホルマリン固定脳では、非常に困難であることが初年度の検討により明らかとなった。初年度に試行した複数の組織透明化プロトコルを吟味し、ヒト脳に最適化されたプロトコルの確立を目指す。 【高屈折率性マウント剤の開発】既存の高屈折率性溶媒のほとんどで、DAPIなどの蛍光核染色液を使用することが出来ない。高性能な高屈折率性マウント剤の開発を進める。 【画像処理技術の開発】脳全域のスキャンが可能であったことから、まずは完全なヒト脳の1断面から得られる膨大な画像の再構成、再構成画像からの細胞数カウントや神経突起の自動トレースなどのトライアルを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度までの研究によって、CV7000のブレインスキャナとしてのスペック確認はできたが、実際に脳標本をセットするためのスライドアダプタについては、これまでの試作品では対応できないことが分かった。そのため、問題点を克服できるような形状のアダプタを考案して、新たな試作品の製作(250,000円)を予定していたが、COVID-19感染拡大の遷延化によって、研究の遂行に大きな支障を来した。本件の遂行については年度を明けてから着手すべきと判断したため、本件を含めて次年度の物品費を計上した。
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