研究実績の概要 |
本研究の目的は、同種造血幹細胞移植に伴う口腔合併症を低減可能な自家造血幹細胞移植を推進するため、造血幹細胞の維持に関与する間葉系幹細胞の細胞集団を同定し、造血幹細胞の増幅培養法を確立することである。マウスで得られた知見を基に、ヒト造血幹細胞の増幅培養法を確立をめざす。 令和元年度は、マウス骨髄細胞のうち、Linage-, Sca-1+, PDGFRα+で分画される、間葉系幹細胞濃度が高い細胞集団(Pα-S)に対してこれまでに行った、single cell RNA sequencingにおいて同定された、遺伝子発現パターンの異なる複数のサブポピュレーションを、それぞれに特異的に発現上昇している表面抗原を用いてセルソーターにより分取し、それぞれの幹細胞特性解析を行った。また、マウス骨髄間葉系幹細胞と造血幹細胞との共存培養において、細胞播種濃度、2種の細胞数の比率、培地組成、間葉系幹細胞と造血幹細胞の播種のタイミングなどについて検討し、血球系細胞数が効率よく増加するプロトコールの確立を試みた。結果、単独培養では増加しない血球系細胞の増加が見られる培養方法を見出した。さらに、造血幹細胞維持との関連が報告されている、c-Mpl欠損マウス由来細胞において、遺伝子欠損が幹細胞特性に与える影響について検討した。加えて、東京大学医学部附属病院口腔顎顔面外科で手術を受けた患者から廃棄される骨髄液を、患者同意を取得した上で採取し、細胞を抽出し、培養を開始した。 令和2年度は、最適化した共存培養で得られた細胞について、CFUアッセイを行い、サブポピュレーションごとの幹細胞性を確認した。また、ヒト骨髄液からヒト間葉系幹細胞とヒト造血幹細胞をそれぞれ分離、培養し、共存培養を行って、CD34+Lin-で示される造血幹細胞数が増加する条件を見出した。
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