研究課題/領域番号 |
19K22704
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
野杁 由一郎 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50218286)
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研究分担者 |
大墨 竜也 新潟大学, 医歯学系, 助教 (30759725)
竹中 彰治 新潟大学, 医歯学系, 研究准教授 (50313549)
三室 仁美 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (80396887)
寺井 崇二 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00332809)
横山 純二 新潟大学, 医歯学総合病院, 准教授 (70422615)
佐藤 裕樹 新潟大学, 医歯学系, 助教 (50644556)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | Helicobacter pylori / デンタルバイオフィルム / Nested PCR / 胃がん / 感染メカニズム |
研究実績の概要 |
申請書の計画に則り研究を遂行した。胃がんの原因であるピロリ菌(Helicobacter pylori)の口腔からの信頼性の高い同定法の開発を目指した。 2018年1月~2019年7月に新潟大学医歯学総合病院に来院し、本研究の趣旨を説明し同意の得られた男女61名(平均年齢57歳)を対象とし、デンタルバイオフィルムを採取した。(承認番号2017-0150)。各サンプルから細菌DNAを抽出し、Single PCRおよびNested PCRを行った。Single PCRは、16S rRNA, およびvacAを標的遺伝子とするプライマー(EHC、Vac-A)を用いた。Nested PCRは、EHEHCの内部領域に位置するプライマー(ET-5)を用いた。コントロールは、H. pylori IID3023株を使用し、Single PCRとNested PCR法の検出限界も検討した。 PCR法での陽性率はそれぞれ、EHC 3.2%(2/61)、Vac-A 3.2%(2/61)であった。Nested PCR法での陽性率はET-5 29.5%(18/61)であった。そのうち、ピロリ菌除菌療法後の患者のサンプル数は18で、陽性率はPCR法で各々EHC 0%(0/18)、Vac-A 5.6%(1/18)、Nested PCR法でET-5 38.9%(7/18)であった。Single PCRにおける検出限界は、1000分の1で、Nested PCR法では、100万分の1であった。 今回61名中21名(34%)がピロリ菌陽性であり、口腔がピロリ菌のリザーバーとして機能していることが示唆され、抗菌療法に偏重したピロリ菌の制御戦略を再考する可能性が示された。現在、消化器内科の分担者が採集したヒトの胃からのH. pylorの検索を行っており、感染メカニズムの一端も解明が待たれるところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載のように、Nested PCRを用いた口腔ピロリ菌の同定法の開発に成功し、胃がんの内視鏡手術時の切除片からのピロリ菌の同定を現在行っており、研究期間内に口腔ピロリ菌の実態と胃-口腔の感染メカニズムの実態の一部が解明に至ると推察される。よって、計画以上の進捗があったと考えられる。一方、分担者三室の担当のスナネズミを用いた感染メカニズムの実験および持続感染制御因子の検索実験は、スナネズミの胃への感染が従来通りにいかず、若干遅れ気味となっている。よって、総じては、順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、分担者である消化器内科医よりヒトの胃の切除片の供与を頂き、ピロリ菌を胃と口腔の両面から同定している。さらに、患者様の病歴(1.投薬状況、2.除菌療法の履歴等)をさらに詳細に調査/さか昇ることにより、胃-口腔の感染メカニズムがさらに詳細に解明される可能性がある。可能な限り長期に試料採集、検査、経過観察した一個体を継続的に検索することが可能であれば、ピロリ菌の感染メカニズムの全貌が明らかになると推察される。他方で、スナネズミの胃への感染については、従来法と新規の感染方法を再考・並行して実施し、再度感染方法を確立し、遅れを取り戻す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新潟大学歯学部学部予算(公費)と合算で購入予定であった低酸素培養装置が、学部予算不足のため、購入が不可能となった。よって、本設備購入資金として予定していた1550千円の内の一部が残金として生じ、次年度使用金となった。 次年度受け入れ予定額では、同設備の合算購入も前年度同様不可能と考えられるため、消耗品と旅費および成果発表費として使用予定である。 低酸素培養装置については、老朽化に伴い、修理不可能な従来品を使用予定である。
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