初代培養軟骨細胞を用いてATAC-seqを行い、Sox9遺伝子の転写開始点から1.5Mb上流までに5カ所のオープンクロマチン領域を同定した。さらにエンハンサー活性の指標となる抗H3K27ac抗体および抗H3K4me2抗体を用いてChIP-seqを行い、2カ所のエンハンサー領域(E1およびE2)を同定した。一方、Sox9を高発現する精巣セルトリ細胞のATAC-seqおよびChIP-seq(GSE99320)ではE1およびE2にピークは認なかった。E1およびE2にSox9 遺伝子minimal promoterを連結させたレポーターアッセイにおいて、E1およびE2は軟骨細胞特異的に高い転写活性を示し、またその転写活性はSox9の発現に相関することを見出した。さらに興味深いことにE1とE2をタンデムに連結するとエンハンサー活性が著明に増加した。したがってE1とE2は、相乗的にエンハンサー活性を促進することが明らかとなった。 生体におけるE1およびE2の役割を検討するために、Cas9ゲノム編集法によりE1またはE2を欠失するマウスを作製したが、骨格形成に明確な表現型は認めなかった。しかしE1およびE2の双方を欠失したマウスでは、四肢の短縮および胸郭の矮小化を認めた。胎生期14.5日齢の四肢よりRNAを採取しRT-qPCRを行った結果、エンハンサーを欠損させたマウスは野生型マウスに比較してSox9およびCol2a1の発現が有意に低下していた。さらにエンハンサー欠失マウスより採取した肢芽細胞は、野生型マウスに比較して軟骨細胞分化能が低下していることが明らかとなった。
|