研究課題/領域番号 |
19K22716
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
久保田 聡 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (90221936)
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研究分担者 |
西田 崇 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (30322233)
服部 高子 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (00228488)
高江洲 かずみ (河田かずみ) 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (10457228)
滝川 正春 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (20112063)
青山 絵理子 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (10432650)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | CCN2 / lncRNA / antisense RNA / gene regulation / skeletal development |
研究実績の概要 |
本研究の対象は、ヒトCCN2の3'-非翻訳療育 (UTR) を過不足なく覆うアンチセンス長鎖ノンコーディングRNA (lncRNA) anti-CCN2 3'-UTR RNA (ACUR)である。ヒト子宮頸癌細胞HeLaと軟骨肉腫細胞HCS-2/3でのACURの発現はすでに予備実験で判っていたが、本研究はまずACURの発現を、別の細胞株や正常ヒト細胞でも検証することから始めた。その結果、ヒト乳がん細胞株MDA-MB-231株でもACURが発現していること、さらにヒト膝関節から分離した関節軟骨細胞でもACURでも強い発現が確認できた。また、その発現量にはやはりCCN2 mRNAと正の相関があった。この所見は関節軟骨におけるACURの生物学的意義を示唆するものであり興味深い。なおCCN2遺伝子がすべての哺乳類に存在することから、マウスにもACURが存在すると思われたが、今後マウスを用いた実験を行うにあたってこの点を確認する必要がある。そこでCCN2遺伝子座の構造を比較解析し、ACURの構造を推定した上でマウスACURの検知を試みた。その結果マウスC3H10T1/2細胞株でもACURが転写されていることを確認できた。しかもその転写量はCCN2 mRNA同様、同細胞の脂肪細胞への分化によって大きく減少することが明らかとなった。 ACURの分子機能を明らかにする第一段階として、ヒトACURを一過性に強制発現するための発現プラスミドを構築した。そして本研究提案当初の仮説である3'-UTR封鎖機能を検証するため、蛍ルシフェラーゼ遺伝子にヒトCCN2 3'-UTRを接続したレポータープラスミドとともに、HCS-2/8細胞に導入してその効果をみたが、強制発現による有意な変化は見られなかった。 なお本研究を進める過程で、CCN2遺伝子座のまったく別の5'-UTR領域にアンチセンスlncRNAを新たに発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は当初の計画に沿って進んでいるが、当初の計画に含まれていなかった、研究上の問題点を解決する作業も行ってきたため、計画以上の進展がみられたとは言い難い。また予想通りの結果が得られなかった実験もあるが、このような事態も予測しており、「今後の研究の推進方策」に述べるような対応策を当初から計画していた。なおこの計画は申請時には、スペース上の制約で研究計画調書に組み入れることはできなかった内容も含んでいる。 以上に加えて、研究を進めて行く過程で新たなアンチセンスlncRNAの存在など、関連新事実が明らかとなってきたことは今後の研究の発展に大きく資するものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
マウスにもACURが存在することを突き止めたのは新発見であると同時に、これによって今後のマウス細胞や個体を用いた実験を行う足場が固まった。したがって計画に沿って、ゲノム編集実験などに進むことができる。これに対してACURの分子メカニズムを解明する研究については、強制発現とレポータージーンアッセイで予想通りの結果が得られていない。したがってまず実験系の多面化、すなわちレポーター遺伝子発現だけではなく標的遺伝子であるCCN2のmRNA発現量、タンパク質産生量への影響も評価し、総合的に結果を解釈する。同時に発現系を改良し、より明確な実験結果を得る。現在すでにレンチウイルスによる発現系の構築を開始している。これで仮説が立証できれば、当初の計画に沿って研究を進める。もし予想通りの結果が得られなかった場合、アンチセンスRNAによるエピゲノム修飾の可能性を想定して実験計画を見直しつつ研究を進める。 なお本年度新たに発見した別のアンチセンスlncRNAについても、ACURとともにCCN2を核とする関連アンチセンスlncRNAメンバーと位置づけ、本研究を核として発展させた次段階の研究では、新たな研究対象として含めるべく、今後発現、機能解析を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度雇用を予定していた研究補助員がカナダに留学したため、予定していた人件費の支出がなかった。またCOVID-19の影響で学会のキャンセルや実験の遂行遅延が生じた影響もある。次年度使用分は金額としては大きくないが、COVID-19により研究がスムーズに進まない場合にはこれを受託解析に利用することも検討し、研究の推進に有効活用する。
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