本研究の目標は、デジタル印象、つまりIntraoral scannerを使用して無歯顎顎堤を撮像し、その3次元情報を利用して適切な床縁形態を構築できるかである。つまり、無歯顎顎堤の不動粘膜面と可動粘膜面の3次元データを採得し、同時に従来の筋形成および最終印象によって得られた床縁形態の3次元形状も採得し、両者のデータを比較し、最終的にその3次元データから床縁形態を推定できるかを検討することであった。 前年度口腔内スキャナとして3Shape TRIOSを利用して自作した空気圧噴出加圧装置付き口腔内スキャナによる撮像システムを用いて,実際の患者を用いて撮像したところ,上顎顎堤は撮像可能であったが、下顎顎堤は十分な画像が得られなかった。そこで、下顎のデジタル印象については、顎堤への何らかの前処置が必要であると考え、水性皮膚鉛筆による顎堤へのマーキング等を行ったところある程度撮像可能になったものの、時間がかかり、実用的には難しいことが確認された。さらに、Intraoral scannerをプライムスキャン(デンツプライシロナ)を用いて撮像したところ、下顎顎堤の撮像は改善されたものの、逆に上顎の口蓋部の撮像が困難になった。 空気圧噴出加圧装置付き口腔内スキャナによる撮像システムについては、不動粘膜分についてはより鮮明な画像が得られることが示された。撮像時の空気圧噴出については、患者の撮像感は問題なく、臨床的に問題なく使用できることが明らかになった。 床縁形態のAIに予測については、COVID-19の影響もあり、十分な画像が得られなかったこともあり目的を果たせなかったが、空気圧によるデンチャースペースの形成の可能性は示唆された。
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