医学的に説明できない身体症状(MUPS)への本邦での段階的ケア体制の開発のため、今年度、倫理審査の承認後、同意を得た成人のWEBアンケート調査で約34000人の身体症状症のスクリーニングをSomatic Symptom Disorder -B Criteria Scale(SSD-12)日本語版を用いて行った。その回答に基づく身体症状症の出現率は約4.6%であった。また、身体症状症群は、健常対照群と比較し、身体症状(PHQ-15)、うつ(PHQ-9)、不安(GAD-7)が有意に高いのみならず、自閉スペクトラム症(ASD)特性(AQ-50)、注意欠如・多動症(ADHD)特性(ASRS-v1.1)も有意に高かった。結果から、身体症状症が発達障害特性により顕在化する可能性が示唆された。身体症状症群は実際に精神疾患として診断を受けていた割合は約0.068%と低かった。さらに、身体症状症群は通院歴が長く、通院頻度が多いこともわかった。セルフヘルプ研究として、経済産業研究所と共同で、慢性緊張型頭痛を有する勤労者を対象とし,5634名のWEBでの同意後、頭痛障害質問紙(HIT-6)を2週間の間隔で行い、50点以上等の適格条件に合致した514名を2群に割り付けランダム化比較試験を行った。その結果、6週間の介入プログラムを1回以上実施した399名で、2群の主要評価における有意差はなかったが,WEB認知行動療法群はWEB心理教育群に比べ、副次評価項目の身体症状(PHQ-15)が6週時に,頭痛症状(HIT-6)が12週時に有意に減少した.また、前後比較でWEB認知行動療法あるいは心理教育による緊張型頭痛の改善が示された。さら、重症な場合に、身体症状症に対するWeb会議システムを介した遠隔認知行動療法のパイロット試験をデザインし、その効果検証を進めた。身体症状症の段階的ケアの実施可能性が示せた。
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