研究課題/領域番号 |
19K22739
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
石橋 みゆき 千葉大学, 大学院看護学研究科, 准教授 (40375853)
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研究分担者 |
佐藤 奈保 千葉大学, 大学院看護学研究科, 准教授 (10291577)
高橋 良幸 東邦大学, 健康科学部, 准教授 (30400815) [辞退]
岩崎 寛 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 准教授 (70316040)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | シチズンサイエンス / 自然災害 / 復興期 / 研究手法開発 / パートナーシップ / 防災公園 / ワークショップ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、災害からの復興に強い人と災害に備えるコミュニティづくりに関する当事者力研究の知見の発展・集積を通じ災害シチズンサイエンス研究手法を開発することである。復興期の研究は、人々の健康、生活、環境等学際的な観点から取組む必要があることに加え、当事者が主役となって地域の復興を考えていくことが重要である。このため、従来の研究者主体の方法ではなく、住民を主体とするシチズンサイエンスを基盤とした研究を実施し、その研究実施過程を分析し、災害研究の新たな手法を開発する。 今年度は、看護学、園芸学、工学、医学の研究者でA.当事者力育成研究班(災害につよい人をづくり)と、B.当事者力推進研究班(災害につよいまちづくり)を編成し、班ごとの詳細の実施計画を立案し、実施準備に取組んだ。 A:災害につよい人づくり班は、「自然災害からの復興に向けた住民と支援者のパートナーシップ形成過程の明確化」と題し実施計画を立案した。本計画について研究代表者の所属機関の倫理審査の承認を得た(受付番号31-115)。研究は2段階で実施し、第一段階では、被災地での支援あるいは研究を行ったことのある研究者にインタビューを実施し、研究者が実施した災害支援研究方法と研究推進における住民とのパートナーシップ形成過程を明らかにする。第二段階では、実際に復興期にあり何らかの生活再構築に向けた活動を経験している地域住民に、第一段階で明らかになった「研究者(支援者)とのパートナーシップ形成過程」を提示し、意見を聴取する。最終的には、この研究手法全体のプロセスが、「災害につよい人をつくる」災害シチズンサイエンス研究手法としてどうであったかを考察する。 B:災害につよいまちづくり班は、防災公園に関する市民を対象としたWEBアンケートの実施準備と自治体と協働して行う防災公園に関するワークショップの実施計画を立案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
9月上旬にA班とB班合同の全体会議を開催し、研究計画をより実現可能なものとするための討議を行った。A班では、当初、自然災害からの復興期にある被災者を対象としたインタビュー調査を計画していた。しかし、討議結果をふまえ、インタビューの対象を、自然災害後に被災地に暮らす地域住民と共に復興に向けた活動あるいは研究を行ったことのある大学や研究機関に属する研究者に変更した。これらA班の研究計画について、研究代表者の所属機関の倫理審査を受審し、2020年の4月に承認を得られた。 B班では、市民の防災公園に関する意識調査としてWEBアンケートを企画、準備しているところである。2020年度、は調査結果を踏まえ、自治体と協働し防災公園をテーマとしたワークショップを計画・実施する予定である。 以上のA研究、B研究を推進するにあたり、先進的に取り組んでいる地域を対象としたフィールド調査を企画した。フィールド調査の目的は以下の3点である。(1)地域住民と共に進める研究を実施するための留意点や工夫に関する示唆を得て、研究方法(インタビューガイドやワークショップの進め方)に反映する。(2)住民の主体性を維持して行う研究の手順・手法を見出すために、フィールド調査における研究者らの介入の影響を住民の普段の生活に照らして考察する。(3)災害シチズンサイエンス研究手法につながる適切な調査方法(時期、対象者へのかかわり方、研究者の滞在期間等)について考察する。 しかしながら、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、フィールド調査を延期せざるを得なくなり、研究方法の点検等ができていない状況である。よって、進捗状況の自己評価を やや遅れているとした。次年度以降、ワークショップの開催やインタビュー調査の時期についてもスケジュールを見直す必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を考え、当初の計画よりも、半年から1年時期を遅らせてA研究とB研究を実施する。 A研究では、自然災害後に被災地に暮らす地域住民と共に復興に向けた活動あるいは研究を行ったことのある大学や研究機関に属する研究者を対象に、自然災害からの復興に向けた住民と支援者のパートナーシップ形成過程に関するインタビュー調査を実施する。4月~9月にインタビュー調査の対象の選定と依頼を行い、10月~11月頃にフィールド調査を実施し、インタビューガイドの見直しなどを経て、新型コロナウイルス感染拡大が収まっていて可能であれば2021年2月を目途にインタビュー調査を開始する。並行してインタビュー内容の分析を進める。 B研究では、2020年4月~6月に、防災公園に関するWEBアンケートを実施し結果の整理を進める。ワークショップについては、全体会議を6-7月に開催し、開催スケジュールの調整と共に、新型コロナウイルスの感染拡大状況と照らして、ワークショップ開催事体が実現可能かどうか検討する。開催しない場合には、災害につよいまちづくり研究として他にどの様な方法があるのかを検討し計画を変更する。 なお、本課題の最終目的は、災害シチズンサイエンス研究手法の開発である。このため、A研究とB研究のプロセスそのものが研究のためのデータとなる。よって、今後行う研究プロセスを詳細に実施者がデータとして記録しておくことが重要である。また、それらを最終的に統合し、災害シチズンサイエンス研究手法として明示できるよう、A研究、B研究それぞれにおいて適宜、研究実施者の意図や省察の内容を記録できるような仕組みも併せて構築していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた状況としては、新型コロナウイルス感染拡大により、先進地域へのフィールド調査が計画通り実施出来なかった影響が大きい。さらに、防災公園に関する市民の意識調査を目的としたWEBアンケートの実施が遅れていることも影響している。これらは、研究計画段階では、いずれも平常時に実施することを想定していたものであった。このため、新型コロナウイルス感染拡大により、市民生活が緊迫した状況になり、目的としていた平常時の災害時への備えの認識や住民同士のネットワーク等が把握できる状況ではないことから、実施時期を見合わせた。よって、フィールド調査に係る旅費や謝金、WEBアンケートの構築や集計に伴う費用が執行できず、次年度に持ち越す結果となった。さらに、これら調査の遅延により、途中経過を公表するなどの対応もできていない。今後は研究成果を積極的に公表し、公表のための経費も適正に使用していく。 以上より、本課題の研究計画全体は、新型コロナウイルス感染拡大が落ち着いてから再開・実施する。2020年度に実施する計画としていたインタビュー調査とワークショップについても遂行スケジュールを、半年から1年遅らせて実施する対応をとる。このため、研究期間の延長申請も視野に入れつつ、研究目的が達成できるようにスケジュールを調整し、適切に研究費を使用する。
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