研究課題/領域番号 |
19K22744
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
峰松 健夫 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任准教授 (00398752)
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研究分担者 |
真田 弘美 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (50143920)
玉井 奈緒 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任准教授 (80636788)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 褥瘡 / スキンブロッティング / ATP |
研究実績の概要 |
本研究では、褥瘡予防ケアの飛躍的効率化を目指し、褥瘡に至る前の軽微な組織損傷を検出できる皮膚保護材の開発を目的とする。ターゲットは傷害を受けた細胞から逸脱したATPであり、スキンブロッティング法により皮膚から非侵襲的に抽出されたATPをルシフェラーゼ反応により検出する。本年度はまず、(1) スキンブロッティング法の信頼性の検証、(2) スキンブロッティング法の妥当性の検証、および(3) In vitroにおけるATP検出システム開発に取り組んだ。 (1) スキンブロッティング法の信頼性:健常ボランティアの前腕の隣り合った2か所で、4名の研究者がスキンブロッティングを行い、測定値の級内相関係数により信頼性を検証した。その結果、評定者内信頼性はICC (1, 1) = 0.93、評定者間信頼性はICC (2, 1) = 0.80といずれも高い値を示し、スキンブロッティング法の信頼性が確認された。 (2) スキンブロッティング法の妥当性:インドネシアで行われた高齢者皮膚調査データの二次解析を行った。既に乾燥皮膚ではNGFb、紅斑皮膚ではIL-2の発現量亢進が知られているため、スキンブロッティング法によるこれらの検出強度を正常皮膚と比較した。その結果、乾燥皮膚におけるNGFb、および紅斑皮膚におけるIL-2の検出強度がいずれも正常皮膚に比べて有意に高く、スキンブロッティング法の弁別妥当性が証明された。 (3) In vitroにおけるATP検出システムの開発:ブロッティングメンブレンにATP標準液を段階希釈した水溶液を2 Lずつ滴下し、種々の条件下でルシフェラーゼ発光基質を反応させた。その結果、ブロッキング後に発光させた場合に明瞭なシグナルが得られた。 次年度は、ATP検出システムを更に改良し、確立したうえで動物実験を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度中にIn vitroでATP検出システムの確立まで完了する予定であったが、COVID-19の流行拡大に伴い、実験を中断せざるを得なくなった。予定していた、ブロッティング素材の検討、およびブロッティングメンブレンとハイドロゲルを組み合わせた皮膚保護材の開発が未実施である。
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今後の研究の推進方策 |
2020年5月末現在、未だ実験再開の目処がたっていないことから、計画の縮小を考えざるを得ない。本研究では、褥瘡発生前の軽微な組織損傷の検出機能と、褥瘡発生予防機能を兼ね備えた皮膚保護材の開発を最終ゴールとしているが、組織損傷の検出機能の確立を優先して研究を進める。本年度中にIn vitro実験および動物実験を完了させ、2021年度に臨床調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染拡大の影響により実験が中断したため、In vitroにおけるシステム開発に必要な資材(各種ブロッティングメンブレン、ハイドロゲル、ルシフェラーゼ発光試薬など)の購入ができなかった。研究室再開後すぐにこれらの資材を購入し、組織損傷検出システムの確立に取り組む予定である。
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