研究課題/領域番号 |
19K22746
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
緒方 泰子 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 教授 (60361416)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 尺度開発 / 高齢者ケア / クリエイティビティ |
研究実績の概要 |
2019年度は、東京都内の全のグループホーム(GH)650ヵ所で働く、施設管理者1名と認知症ケア経験1年以上の介護職または看護職1名を対象に、無記名自記式質問紙調査を行った。看護職のいるGHには、看護職に回答を依頼した。質問紙に回答後は、回答者ごとに返信用封筒に封入し研究者宛に直接郵送してもらった(調査期間:2019年9~10月)。調査内容は、翻訳したThe Person-centered Care Assessment Tool (P-CAT)、人生最終段階におけるケア(看取り)におけるグループホーム職員の創意工夫・困難感(自由記載)などである。調査は、研究代表者の所属組織における倫理審査委員会での承認後に行った。分析には、SPSS ver.23, Amos ver.23を用いた。 回収数158部(回収率:12.2%)、有効回答数は149部であった(有効回答率11.5%)。回答者の平均年齢は47.7歳、高齢者ケアの経験年数は平均10.8年、事業所勤務年数は平均6.2年であった。回答者の約80%が介護福祉士資格を有していた。P-CAT日本語版の信頼性と妥当性を確認するため、各項目の項目間相関とI-T分析を実施後、探索的因子分析を行った。その結果、2因子(ケアの個別性の質、組織的・環境的サポートの量)9項目の構造が確認された。更に確認的因子分析を行い、適合度指標は、GFI=0.961、AGFI=0.933、CFI=0.994、RMSEA=0.019であった。尺度全体のクロンバックα係数は0.756、下位因子別では0.692と0.699であった。看取りにおける創意工夫・困難感については記載内容を質的に整理した。 また、海外における高齢者ケアの創意工夫点について情報収取を行うため、上記調査とは別に英国の研究者とウェブ会議を複数回行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、高齢者ケアの実践に埋もれた“クリエイティビティ(発見する力や発見を価値の創造につなげる力のようなもの、CR)”に着目し、CRに関する行動を顕在化して言語化し、CR評価尺度の開発を目指している。2019年度は、CRに関連した既存の尺度の日本語版を開発し、グループホームで働くケア実践者を対象に調査を行った。当該尺度の信頼性および妥当性に関する分析を行うとともに、CR尺度開発に向けた調査方法に関する情報も得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、高齢者ケア組織で働く実践者の「クリエイティビティ(発見する力や発見を価値の創造につなげる力のようなもの、CR)」を表す行動(CR行動)について質問群を作成して調査を行う予定である。しかしながら、年度当初より新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の影響により、人と会うことや外出が制限され、インタビューや質問紙調査の実施そのものが困難であるとともに、倫理審査委員会が休止状態にある。対応策として、COVID-19によるこの状況が落ち着き、研究活動を再開できるタイミングで直ぐに研究を開始できるよう、文献検討や質問紙の作成等、外出せずともできることに取り組み、本研究の進捗への影響が最小限となるよう準備をしておく。更に、本研究の本質的目的が状況終息後の残された期間で達成されるよう、質問紙以外にCRを確認できる方法についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は、東京都内の全グループホームを対象に質問紙調査を行ったが、予想より回収率が低く、質問紙回収のための郵送費やデータ入力費等があまりかからなかった。 2020年度は、国内外の動向を把握して質問紙調査に反映させるため、情報収集のための旅費(国内・国外)を計上し、回収率の高さを見込んだ規模の質問紙調査を実施するとともに、成果発信のための費用(論文執筆・掲載費)等を使用計画に含める。
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