研究課題/領域番号 |
19K22750
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
赤澤 宏平 新潟大学, 医歯学総合病院, 教授 (10175771)
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研究分担者 |
石川 卓 新潟大学, 医歯学総合病院, 准教授 (70586940)
齋藤 翔太 新潟医療福祉大学, 医療経営管理学部, 助教 (60739465)
中澤 香子 新潟大学, 医歯学総合病院, 薬剤師 (40816964)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 費用対効果分析 / 遷移確率 / ハザード関数 / マルコフモデル / 感度分析 |
研究実績の概要 |
医療サービスを分配する方策を評価する手法として, 費用対効果分析(以下、CEA)がある。 現在のCEA手法は理論的なあいまいさを残している。本研究では, 現在のCEAの問題点を見 出し, 統計学的理論に基づき解決策を導き出すことを目的としている。2019年度の研究実績は以下のとおりである。 (1)国際雑誌に掲載した治療薬や検診のCEA論文や関連するCEA論文から問題点を抽出した。本年度には、特に糖尿病疾患、外科手術後の術後感染、乳治療に関するCEA論文を45編選定して、統計学的問題点の抽出を行った。 (2)問題点として抽出された点は次のとおりである。マルコフモデルによるCEAでは一つの状態から次の状態に遷移する確率を定めるが、この手法が論文によりまちまちであり誤りが多いことが分かった。生存時間分析のハザード関数の推定が正しく行われてないし、ハザードの推定を行うにしてもパラメトリック関数での推定例が多く、適合性が問題となる。次に、症例の過去情報を反映する解析が行われていないという問題がある。糖尿病などは年々病状が変化するので同じ状態の中でも遷移確率をサイクルごとに変動させる仕組みが必要となる。3点目として症例の不均一性が考慮されていない。年齢が20歳から65歳までを想定してマルコフモデルを仮定した場合、若年者と高齢者では治療効果や病状の進行速度に違いが生じる可能性がある。症例の基本情報(年齢、性別、生活歴、病気の重症度など)の違いを考慮した費用対効果分析が必要となる。 (3)マルコフモデルを仮定したCEAの論文として、胃癌検診の検査方法の違いによる費用対効果、乳癌の治療薬の違いによる費用対効果をQOLを考慮した生存年数の延長に基づき評価して論文投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度の研究計画では、国際雑誌に掲載されているCEA論文の抄読を行い、統計学的な問題点を洗い出すことが定められていた。これらの研究計画に沿って文献調査をほぼ完了している。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度には、主に以下のことを行う。 (1)遷移確率の経年変動を反映させるために, マルコフモデルを拡張した生存時間分析のイベントヒストリーモデルを時間依存型に改良して応用する。 (2) 遷移確率の推定では, パラメータの入らない関数を加えたセミパラメトリックモデルの利用を提唱する。 (3) 感度分析の分布選択の問題では, 費用・効用値・遷移確率の変動を実臨床に近い分布で近似する。また, 複数の分布間に相関をもたせるために, 統計学における多変量分布モデ ルを開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画時に計上してした物品費のパソコン購入費が現有のパソコンで処理することができたことによる。ただし、パソコンの老朽化が進んでいるので2020年度にはパソコンの購入を行う予定である。旅費については1月から3月については新型コロナウイルス流行に伴い、出張できなくなくなったことによる。
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