生活習慣病のゲノムワイドsingle-nucleotide polymorphisms (SNPs)関連解析研究の進展により、ゲノムワイドSNPsの全情報(各SNPの遺伝子型と疾患発症への寄与度)を統合し、個々人のゲノムワイド多遺伝子リスクスコア (genome-wide polygenic risk score: GPS)を得ることで、GPSに基づく疾患発症リスク予測や、発症ハイリスク群の特定が可能であることが示されてきている。 本研究では、「遺伝的には疾患発症ハイリスク群に属するにもかかわらず発病しない人たちには、発症を抑制する共通・個別の因子が存在する 」という仮説を設定し、石川県羽咋郡志賀町の地域住民ゲノムコホート「プロジェクトS.H.I.P」を対象として、この仮説の検証に取り組む。 本年度は、2型糖尿病、肥満症、脂質異常症を含む複数の生活習慣病を対象とし、BioBank Japanサンプルなどを用いた日本人GWAS研究の非制限公開データ(NBDC Research ID: hum0014.v21)より得たゲノムワイドSNPs情報を参照データとし、LD pred法によりコホート参加者1200名それぞれの各種疾患発症にかかるGPSを算出した。GPSに基づくハイリスク群(GPS上位10%集団)において、ベースライン調査結果(生活習慣、既往症等)や診療情報(合併症、投薬履歴等)などの発症-未発症群間比較を行い、統計学的に有意な候補事象・因子を見いだした。同定した候補事象・因子については、コホート内の残りの90%集団においても同様の分析を行い、発症抑制因子となる可能性も併せて評価し、疾患未発症者に共通する発症抑制因子候補(遺伝・環境因子)を見出した。
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