研究課題/領域番号 |
19K22754
|
研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
飯田 礼子 福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (40139788)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2023-03-31
|
キーワード | ホスホジエステラーゼ / グルコース耐性 / 細胞増殖 |
研究実績の概要 |
本研究では、M-LP遺伝子を個体レベルおよび細胞レベルにおいて欠損させ、それぞれ正常個体や野生型細胞と比較検討しM-LPの機能を解明することを目指している。 今年度は、2019年度に作製したM-LP-KOマウスについて病理組織学的および分子生物学的解析を実施し、以下のような成果を得た。
1.従前の研究により、M-LP-ノックアウト(KO)マウスの膵ランゲルハンス島においてβ細胞の過形成が起こり、耐糖能が上昇することが示された。そこで、この事象の分子メカニズムを解明するため、RNAおよびタンパク質レベルでの解析を実施した。M-LP/Mpv17Lの欠失は、Wntシグナル伝達経路の主要因子であるβ-カテニンおよびGSK-3BなどをプロテインキナーゼA(PKA)依存的にリン酸化し、その結果、リン酸化カテニンが核に移行して細胞増殖にかかわる標的遺伝子の発現を促進することが明らかとなった。また、膵におけるM-LPの発現は若年期において極めて低く、成熟期でピークに達したのち老年期に大きく低下することが示された。
2.老化したM-LP-KOマウスの病理組織学的解析の結果、求心性心肥大(心室壁の肥厚、左心室内腔の高度の狭小化)が認められ、RNAおよびタンパク質レベルでの解析によりWntおよびMAPK経路の活性化が示された。一方、アザン染色の結果から、この肥大は線維化を伴わないことが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
KOマウスにおいていくつかの表現型が見られ、生体におけるM-LPの機能が徐々に明らかになってきた。しかし、今年度はCOVID-19の影響により抗体などの試薬の納期が大幅に遅れ、実験が実施できないことが度々あった。
|
今後の研究の推進方策 |
老化KOマウスにおいて求心性心肥大が認められたことから、この分子メカニズムを解明するために以下の実験を実施する。 1.野生型マウスおよびKOマウスの心より抽出したmRNAについて、心筋細胞増殖やcAMP/PKAシグナル伝達経路などに関わる遺伝子の発現解析を実施する。 2.野生型マウスおよびKOマウスの心より心筋細胞増殖やcAMP/PKAシグナル伝達経路などに関わる細胞質、膜および核局在タンパク質を抽出し、量的相違やリン酸化状態の相違について解析する。 3.マウス心におけるM-LPの年齢依存性発現の解析 年齢別に採取したマウス心よりmRNAを抽出し、M-LP発現量の解析を実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響で研究に必要な試薬などの入手が困難になり、当初の計画通りに研究を実施できなかった。実施できなかった研究実施のために次年度使用額を使用する。
|