研究課題/領域番号 |
19K22756
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石井 晃 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (30252175)
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研究分担者 |
名取 雄人 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (80610104)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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キーワード | 法医学 / 法医鑑定 / 法医生化学 / ペプチド分析 / 質量分析 |
研究実績の概要 |
本研究では、生体試料における目的タンパクを定量し、次いで、実検体で切断されているペプチドフラグメントを同定し、法医診断に資するタンパク(ペプチド)マーカーの探索を行うことを目的とする。対象となるタンパクとしては、熱中症で上昇するミオグロビン、心不全で上昇するNT-proBNPが挙げられる。 本年度は、昨年度に引き続き、標準尿サンプルからのミオグロビンの検出条件について検討した。法医鑑定においては、多くのサンプルが腐敗変性の影響を受けていることを勘案し、新鮮尿及び2週間室温に放置して腐敗させた尿サンプル0.25 mLにヒト組み換えミオグロビンを、終濃度10 ng/mLになるように添加し、さらに1 mlのアセトニトリルを添加して攪拌後、氷上で15分静置し、その後1,700 gで15分遠心し、沈殿を25 microLの蒸留水ないしトリプシン溶液を添加し、直ちに2×サンプルバッファーを添加して加熱変性したものを未処理サンプル、37度の水浴で60分処理後、25 microLのサンプルバッファーを添加して加熱変性したものを処理サンプルとし、SDS-PAGEを行った。その後、Western blotを行い、抗ミオグロビン抗体による染色を行った。すると、処理サンプルでミオグロビンのバンドが認められなかったのは予想通りであったが、腐敗尿では、未処理サンプルでもミオグロビンのバンドは認められなかった。そこで、同様の実験を、最大200 ng/mLまでミオグロビンを添加した尿で行ったところ、腐敗尿では、感度限界が5分の1程度に低下することがわかった。今後、種々の腐敗条件で同様の結果が得られるかを検討し、再現性の高いミオグロビン検出条件の最適化を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度も、コロナ禍による登校制限などが重なり、尿中ミオグロビンの電気泳動実験が遅延したため。
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今後の研究の推進方策 |
腐敗尿におけるミオグロビンの検出限界の低下は、ミオグロビン分子が、腐敗尿に含まれるタンパク成分ないし低分子物質に吸着する可能性が考えられる。昨年、免疫沈降法はミオグロビンの濃縮に不利であるという結果がでたものの、免疫沈降法を再度採用する可能性もある。また、腐敗尿を従来解剖時に依頼していた検査法で検査し、データを比較することも予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
先に述べたように、腐敗尿を用いた予備実験において、ミオグロビンの検出感度が明らかに低下するという現象が認められ、この原因を解析しないと次のステップに進むことができない。そこで、1年間研究期間を延長し、実験助手の人件費に充てることとした。
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