研究課題/領域番号 |
19K22760
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
木澤 義之 神戸大学, 医学部附属病院, 特命教授 (80289181)
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研究分担者 |
森田 達也 聖隷クリストファー大学, 看護学研究科, 臨床教授 (70513000)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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キーワード | アドバンス・ケア・プランニング / 予後予測 |
研究実績の概要 |
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)は実施されれば効果があることがわかっているが、問題なのは、「ACPを始めるきっかけがない」ことである。医師がACPをはじめるきっかけとして、サプライズクエスチョン(医師が「患者が1年以内に死亡したら驚くか」を自問自答し、「驚かない」こと)をきっかけにして患者にアプローチすることが推奨されているが精度が低い。本研究の目的は、医師がACPの話し合いを始めるきっかけとして、、血液検査とバイタルサインという客観的な指標のみを組み合わせた予後予測モデルを開発しその有効性を検証することである。 2021年度は、2020年度に開発した予測モデルを、他のデータベースを用いて精度を検証し、予測モデルの外的妥当性が確認した。また、開発した予後予測モデルを、どのような方法で医師、患者に伝えると良いか、ということを患者とその家族を対象とした調査を行って探索した。その結果、約60%の患者が、インターネット上で予後予測を知りたいという希望があり、生命予後だけでなく機能予後(いつまで仕事を続けられるか、いつまで身の回りのことを自分でできるか、いつまで旅行に行くことができるのかなど)を知りたいと考えている患者、家族が一定数いることが明らかになった。以上により、予後予測を伝えるときには、できる限り正確な生命予後を伝えることだけが重要ではなく、機能予後について伝えることの重要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の流行により、介入試験をする環境が整わず、研究計画が遅延した。研究方法に工夫をこらし、感染症対策下でも実施できるように研究を計画している。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、インターネット調査の手法を用いて、重い病を持つ患者の診療を行う医師を2群に分ける。対象群はACPの目的を「意思決定できなくなった時に、自分の意向に沿った治療・ケアを受けるためにACPは有用である」「代理決定者を予め決めておき、その方と共にACPをしておくと、患者の意向が尊重され、患者と家族の精神的負担が減ることがわかっている」ことをあらかじめ伝える。その上で対象者に患者は3ヶ月のSQ陽性(3ヶ月以内に亡くなってもびっくりしない)状態であることを伝える。介入群では、上記の情報に加えて、客観的予後予測56日の生存確率、30日の生存確率、機能予後などの客観的予後予測情報を加える。そのうえでアウトカムとして、医師のACP実施の意欲 (この外来もしくは次回の外来で ①代理決定者を決める、②代理決定者と、自分が重い病にかかり、意思決定ができないくらい病状が悪くなり、回復不可能である時にどのような治療やケアを受けたか/受けたくないかについてその理由も含めて具体的に話し合うこと、への意欲)を両群で比較する。 また、この客観的予後予測を聞いて、ACPのきっかけとしてどのような影響があったかについて質的調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行により、介入試験をする環境が整わず、研究計画が遅延した。2022年度は、感染症対策下でも実施できるように研究を計画している。具体的には、インターネット調査の手法を用いて、重い病を持つ患者の診療を行う医師を2群に分ける。対象群はACPの目的を「意思決定できなくなった時に、自分の意向に沿った治療・ケアを受けるためにACPは有用である」「代理決定者を予め決めておき、その方と共にACPをしておくと、患者の意向が尊重され、患者と家族の精神的負担が減ることがわかっている」ことをあらかじめ伝える。その上で対象者に患者は3ヶ月のSQ陽性(3ヶ月以内に亡くなってもびっくりしない)状態であることを伝える。介入群では、上記の情報に加えて、客観的予後予測56日の生存確率、30日の生存確率、機能予後などの客観的予後予測情報を加える。そのうえでアウトカムとして、医師のACP実施の意欲 (この外来もしくは次回の外来で代理決定者を決める、代理決定者と、自分が重い病にかかり、意思決定ができないくらい病状が悪くなり、回復不可能である時にどのような治療やケアを受けたか/受けたくないかについてその理由も含めて具体的に話し合うこと、への意欲)を両群で比較する。この調査について、計画的に資金を利用する予定である。
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