研究課題
本年度は網羅的なゲノム解析から得られた遺伝情報を用いて機械学習を行い、顕微鏡下精巣内精子採取術(Micro-TESE)における精子回収を予測することができるかどうかを検討した。非閉塞性無精子症と診断され、Micro-TESEが施行された28名を対象にした。28名についてゲノム解析により、約600,000のsingle nucleotide variant (SNV)を得た。28名のうち27名を学習群として約600,000のSNVについて関連解析を行い、P値0.005、0.01、0.05以下のSNVを抽出した。モデルとしてRandom Forest (RF)、Support Vector Machine (SVM)、Naïve Bayes (NB)、Neural Network (NN)を用いて機械学習を行った。学習させていない残りの1名をテスト群とし、28名それぞれがテスト群となるように、合計28回シミュレーションした。また、正解率が高くなるようなSNVの選択を検討した。関連解析の結果から、P値0.005、0.01、0.05以下のSNVを抽出して機械学習を行った結果、P値0.01以下のSNVが最も正解率が高かった。4種のモデルで比較したところ、NBが最も高い正解率78.5%を示した。さらに、P値0.01以下のSNVのうち、28回のシミュレーションで共通しているSNVを抽出して機械学習を行った。その結果、特にSVM、NNにおいて高い正解率を示した。今回、NOA患者28例を対象とした検討であるが高い正解率を示したことから、今後、例数を増やすことや学習対象とするSNVを検討することで、より信頼性の高い精子回収予測式の構築が期待される。
2: おおむね順調に進展している
現在28名を対象に網羅的なゲノム解析を行うことができた。Micro-TESEにより精子が回収された症例と回収できなかった症例で関連解析を行い、いくつかの条件で候補SNVを抽出した。また、機械学習についても4つのモデルについて検討できた。シミュレーションの回数なども検討でき、現在のところNBが最も高い正解率78.5%を示した。今後、例数を増やしたり、validation解析も必要となってくるが、今年度は概ね順調に研究が進んでいる。
MD-TESEを受けた無精子症患者を対象に、網羅的なゲノム解析によりMD-TESEによる精子回収を予測するシステムを構築することを目的とし、次年度は、以下の検討を行う。試料採取の協力を得ている国際医療福祉大学病院リプロダクションセンターにおいて、MD-TESEが施行された無精子症患者を対象に、次世代シーケンサーを用いて、塩基配列の解析を行う。種々のアノテーションデータを用いて候補SNVを抽出する。また、KEGGなどの遺伝子ネットワークを使用して、パスウェイ解析を行う。このような情報をMD-TESEにより精子が回収できた症例と出来なかった症例で関連解析を行う。抽出したSNV情報を用いて、回帰分析や判別分析などの統計学的手法およびサポートベクターマシーンなどの機械学習の手法を用いて検討を行う。構築した予測式の妥当性について、別個の患者を対象に検証する。陽性・陰性反応の的中度の結果から、それぞれの方法で得たモデル式の妥当性を評価することで、最適なMD-TESEによる精子回収予測モデル式を構築する。
当初予定していたより、次世代シーケンス解析が安価であったため、次年度使用額が生じた。翌年度の研究費と合わせて、次世代シーケンス解析と消耗品の購入に使用予定である。
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J Hum Genet
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細胞
巻: 51 ページ: 38-40
アグリバイオ
巻: 3 ページ: 81-84
https://www.tokushima-u.ac.jp/ph/faculty/labo/inf/