研究課題/領域番号 |
19K22766
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
蔦島 譲治 宮崎大学, 医学部, 研究員 (20771257)
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研究分担者 |
高宮 考悟 宮崎大学, 医学部, 教授 (40283767)
内田 琢 宮崎大学, 医学部, 助教 (60464137)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 恐怖記憶 / 遺伝 / 幼児虐待 |
研究実績の概要 |
遺伝とは親から子へ形質が連綿と受け継がれていく現象であり、生物の基本的な性質の 一つである。しかしながら親が経験した記憶は遺伝子を通じては子に伝わらないというの が常識である。ところが驚くことに、申請者のこれまでの予備実験では音と電気刺激による恐怖条件づけした親マウスを交配させ、誕生した仔マウスに音を聞かせると恐怖反応 (freezing) を示した。すなわち親の「恐怖記憶」が仔に遺伝したことを示唆する結果を 得た。このように親の獲得形質が子に伝わるエビデンスは近年いくつか報告されており、 これまでの「遺伝」の概念が覆りつつある(Dias B.D., et al. Nat. Neurosci. 2014, Debiec J., et al. PNAS 2014)。本研究では親マウスへいくつかの条件下で恐怖条件づけを行い、親マウスの「恐怖記憶」がどのように仔マウスへ伝わるのかを明らかとするために、遺伝子発現やエピジェネティクス解析へと展開して解析してきた。これまでの研究で、親である雌マウスが幼若期に電気ショックによる恐怖記憶を獲得した場合において、それらから生まれた子供のマウスにおいて恐怖記憶の伝達が確認された。具体的には、電気刺激と音を関連させた恐怖条件付け記憶を獲得した母親マウスから生まれた仔マウスは、音だけの条件刺激だけで恐怖反応を示した。それに反し、成体の雌マウスが恐怖記憶を獲得した場合は、それから生まれた仔マウスにおいては、恐怖記憶の伝達はみとめられなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスを継代することによる結果が得られる実験であり、新型コロナ流行のため本学の動物センターにおいて予期せぬ飼料不足を避けるためにマウスの飼育制限も行われ、実験を行うために十分な数のマウスを確保するための大規模な繁殖が困難であったことや、緊急事態宣言に関連した実験施設における自由な研究活動・学会出席のための移動の制限も、予定された研究の遅延原因となった。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られた”幼若期に恐怖記憶を獲得した母マウスから生まれた仔に恐怖記憶が伝達されている”結果の背景をさぐっていく。具体的には、本当に恐怖記憶が仔は伝達されたのか、恐怖記憶を受けた母親マウスの行動が仔マウスの生育に関与していないかを見分けるため、恐怖記憶を受けた母マウスから生まれた仔マウスを仮親マウスにうつし、母マウスの育児に対する影響を見極める。本当に、恐怖記憶が母マウスから仔マウスへ伝達されたかが確認された場合には、それらの脳を用いて脳の責任部位を決定、関連分子の探索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ流行のため本学の動物センターにおける予期せぬ飼料不足を避けるためにマウスの飼育制限も行われ、実験を行うために十分な数のマウスを確保するための大規模な繁殖が困難であったことや、緊急事態宣言に関連した実験施設における自由な研究活動・移動の制限も、予定された研究の遅延原因となった。そのため経費を次年度に持ち越した。
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