建築資材等から放出される揮発性有機化合物によるシックビル(シックハウス)症候群(SBS)は未だ重要な健康課題である。中でも2-エチル-1-ヘキサノール(2EH)は、長期的に比較的高濃度で室内空気中に検出される事例が日本中で多数報告されている物質である。SBSでは、鼻、喉、目などの症状に加え、皮膚症状を訴える症例が数%報告されているが、2EH反復曝露により皮膚症状が生じるのかを解明するために、2EH慢性吸入曝露マウスの皮膚を観察した。2EH 6ヶ月曝露開始22週目からマウス臀部から背中にかけて紅斑を中心とする皮疹を有する個体が有意に増加した。また、脱毛と皮膚硬化が観察された。この皮疹部分の表皮は、濃度依存的に肥厚が増大し、真皮には、線維芽細胞などの皮膚の構成細胞 が増加する傾向が見られたが、CD45陽性の炎症細胞の増加は観察されなかった。真皮の変化と外観上の紅斑の度合いは一致しなかった。部位により変化の有無が異なっており、吸入曝露による全身影響の可能性は低いと考えられる。
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