研究課題/領域番号 |
19K22773
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
友杉 真野 (堀中真野) 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80512037)
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研究分担者 |
増田 光治 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10305568)
酒井 敏行 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (20186993)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 予防 / RB / 動脈硬化 |
研究実績の概要 |
動脈硬化を主な原因とする循環器疾患は、近年では日本人にとって「がん」に並ぶ、重要な死因である。近代の日本人は、生活習慣が明らかに欧米化しつつあり、がんと同等に予防・治療研究が喫緊の課題とされているのが循環器疾患である。 研究代表者らは、「代表的がん抑制遺伝子『RB』の失活が最も重要な発がん機構である」ことを実験予防医学の立場から証明している。RBは細胞の増殖の正常化に寄与している。「がん」と同様に「循環器疾患」も血管や臓器を構成する細胞の異常増殖に起因することが明らかとされており、RBの再活性化は「循環器疾患」の予防として有効かもしれない。研究代表者らは、種々のがん予防食品成分が、がん細胞に対してRB再活性化能を有していることを数々報告している。本研究課題では、独自に見出した「RB活性化能を有するがん予防成分」の動脈硬化に対する予防効果の可能性について検討している。
2019年度は、ヒト大動脈血管平滑筋細胞、ヒト大動脈内皮細胞を用い、増殖因子添加による過剰な細胞増殖に対し、RB活性化成分のおよぼす影響を評価した。血管細胞の増殖刺激として、文献情報から血小板由来成長因子(PDGF)と血管内皮増殖因子(VEGF)を選択し、まず、それらの添加条件を決定した。その条件のPDGF刺激、VEGF刺激によって誘導される細胞増殖に対し、RB活性化成分の抑制能を評価した。その結果、再現性をもって、RB活性化成分の添加によって、血管細胞の過剰な増殖が有意に抑制されることを見出した。さらに、増殖刺激により誘導される炎症性ケモカインのmRNA発現量が、上記のRB活性化成分によって抑制される結果も認められた。現在、引き続き再現性確認を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト血管平滑筋細胞、ヒト大動脈内皮細胞の培養条件の検討、および増殖刺激の添加条件(時間・濃度)やRB活性化成分の添加条件(時間・濃度)、それら組み合わせた検討における添加のタイミング、培地中の血清濃度などの検討において、当初の予定より時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
in vitro解析 2019年度の結果を受け、ヒト血管細胞において増殖刺激により誘導される異常増殖に対し、RB活性化成分の単一での増殖抑制効果や複数の併用による増殖抑制効果についても検討を行う。また、増殖刺激により誘導される炎症性ケモカインのmRNA発現量に対するRB活性化成分の阻害効果の再現性確認実験を行う。さらに細胞内タンパク質を抽出し、RBの活性の変化をWestern blottingにて検証する。 また、動脈の硬化メカニズムの中で、血管壁への単球の浸潤と遊走が重要であることがわかっている。RB活性化成分が、この単球の遊走に対しても阻害効果を発揮しうるか否かを評価する。そのために、マウス単球のJ774A.1細胞を使用する。リポポリサッカライド(LPS)刺激により、J774A.1細胞の増殖が促進し、活性化した状態に対し、RB活性化成分の影響について評価を行う。
in vivo解析 動脈硬化モデルのApoE欠損マウスに対し、高脂肪食を与える。その間、in vitro解析の結果から細胞増殖抑制能、RB活性化能が認められた果汁候補を経口投与する(1回/日×5日/週)。定期的に体重測定、行動観察を行う。期間終了時、血液・組織を回収し、血中トリグリセリド値、コレステロール値を測定する。心臓血管におけるプラーク数を評価する。
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