研究課題
本研究の目的は,インビジブルな看護技術の「熟練知」を評価する指標を開発し,具体的な数値として得点化できるシステムを開発することである. 看護職は常に「自分自身の技能熟練度を知りたい」と考えている.この点に着目し,これまで具体的に得点化評価が困難(インビジブル)な看護技術の「熟練度合」を看護者の「心・技・体」と看護技術対象者(患者)の「心」「体」の5つの側面(認知的,技能的,情動的も含まれる)のデータを総合的に分析したうえで看護師の「熟練知」として定義し,構造化して客観的に評価する.本研究では,精度高く自動判別を行うために人工知能(AI)のディープラーニングを用いて「熟練知」を自動判別することを試みる点で新しい.この研究成果は,Society5.0の時代にIoTが医療分野に浸透した際,各センサ値からいち早く看護職の能力が可視化され,未来のあるべき姿を考える上での貴重な資料となる.看護師の「熟練知」評価指標を開発するために,「熟練度合」のデータ収集,「熟練知」の構造化と得点化の3段階に分けて研究を行う.対象技術は最も看護職への評価を左右する「静脈穿刺技術(採血)」とし,看護学生及び看護職を対象に行う.今年度は「熟練度合」のデータ収集と分析を行った.具体的には,看護師の技術の熟練度合を測るために,技術実施時に発生するインビジブルなデータを分析した.客観的データとして脳波,脳血流量,視線,手指の圧力,血管モデルの血管選択状況などである.その結果,熟練度合を示す指標としては,血管選択時の視線の動きと血管穿刺時の皮膚進展圧力が有用であることが示唆された.
2: おおむね順調に進展している
看護師の「熟練知」評価指標を開発するために,「熟練度合」のデータ収集,「熟練知」の構造化と得点化の3段階に分けて研究を行う.対象技術は最も看護職への評価を左右する「静脈穿刺技術(採血)」とし,看護学生及び看護職を対象に以下のスケジュールで行う.今年度は①のデータ分析と構造化,②重要な指標の選定を行った.① 熟練度合を測るデータ収集:技術実施時に発生するインビジブルな個人の「心・技・体」データを収集する.客観的データとして「心」の部分は脳波,脳血流量,心拍,視線,発話など,「技」の部分は圧力,加速度,筋電,「体」の部分は全身運動や四肢動作,患者側の血管の状況などを計測する.(2019)② 熟練知の構造化:収集したデータをデータマイニングで分析し,構造化する.自動化するためにディープラーニングで用いる入力データは「静脈穿刺の困難さ(血管の太さ,深さ,可動性)」,出力データは「静脈穿刺の成功率」とし,「熟練知」判定の精度を検証する.(2019後半~2020前半)③熟練知の得点化:総合的な熟練度合,熟練知を得点として表示できるようにする.評価項目は「手順」,「血管の選定」,「手技の正しさ」, 「患者への配慮」,「動作・身のこなしの美しさ」,「段取りのよさ」等とし,評価実験を行う.(2020後半)
看護師の「熟練知」評価指標を開発するために,「熟練度合」のデータ収集,「熟練知」の構造化と得点化の3段階に分けて研究を行う.対象技術は最も看護職への評価を左右する「静脈穿刺技術(採血)」とし,看護学生及び看護職を対象に以下のスケジュールで行う昨年度は最も看護職への評価を左右する「静脈穿刺技術(採血)」を対象として「熟練度合」に関するデータ収集と分析を行った.具体的には,技術実施時に発生するインビジブルなデータである脳波,脳血流量,視線,手指の圧力,血管モデルの血管選択状況などである.分析した結果,熟練度合を示す指標としては,「静脈穿刺の困難さ(血管の太さ,深さ,可動性)」における,血管選択時の視線の動きと血管穿刺時の皮膚進展圧力が有用であることが示唆された.その結果に基づいて,看護学生のデータを収集した.今後はそれらデータをもとに構造化,自動化を行う予定である.まずディープラーニングで用いる入力データは「静脈穿刺の困難さ(血管の太さ,深さ,可動性)」,出力データは「静脈穿刺の成功率」とし,「熟練知」判定の精度を検証し,熟練知の得点化(総合的な熟練度合,熟練知を得点として表示できるようにする)を行う.評価項目として「手順」,「血管の選定」,「手技の正しさ」, 「患者への配慮」,「動作・身のこなしの美しさ」,「段取りのよさ」等を設定し,評価実験を行う.
静脈可視化機器の購入予定であったが,現状の市販機器では看護師の不慣れから確かな静脈同定には至らないと判断した.静脈選択については,対象者個人の血管特徴を触覚等で感知していることから,その正確さの判断を行う機器の選択が必要となったため,機器開発も含め検討を行う予定である.
すべて 2020 2019 その他
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